バスケットボールは 競うべきか?闘うべきか?

参考文献:競争闘争理論(Competition and Struggle Theory)

私なりの解釈なので、詳しくは書籍を購入してください!

【はじめに】

試合に負けた時、「気持ちが足りない、魂を感じない、闘えていない」
このような精神論をコーチが使ってしまうと、敗因を振り返る為の「思考を止めるツール」となってしまい、ヒエラルキーを利用したパワハラと同じ構造になってしまう。
しかしながら、拮抗しているなかで勝敗を分けるのは精神力であると、私は経験上、確信していたが、「気持ちが足りない」以上に言語化できないでいた。
そんな時に「競争闘争理論」で出会い、理解するに至った。

【ジャパニーズ・ガラパゴス・バスケットボール】

日本は島国で、他国とのバスケ交流は限定的であり、ガラパゴス(独自進化)である。
アメリカのネイティブバスケと比べて別の文化が形成されている。

日本:部活動(人数上限なし、トーナメント戦)
欧州:クラブチーム(人数上限あり、リーグ戦)
アメリカ:シーズン制(ストリート含め選択肢が無数)意外にも制度は雑
韓国:エリート(選抜)分配育成方式
中国:国策(誰が何のスポーツをするか国が決める)
NBAアカデミー:オーストラリア(オセアニア)、インド(南アジア)、メキシコ(中南米)、セネガル(アフリカ)のバスケ発展途上国で発掘育成

私たちが知っているバスケはFIBA160カ国分の1のバスケだけである。
自分の常識は世界の常識ではない!

【スポーツを分類(カテゴライズ)する】

個人or団体:味方の有無
競争or闘争:妨害の有無
間接的闘争or直接的闘争:身体接触の有無

バスケットボールを団体闘争に分類する

【思考回路と思考態度】

バスケットボールは「認知→判断→実行」のスポーツである。
今日まで日本のバスケ界がアプローチしてきたのは「認知から判断」までの思考回路であるが、実際には認知してきた時に生じる思考態度(前提部分)を揃える必要がある

【集中力について】

「集中しよう」バスケでよく使われるフレーズ。
「集中力とは一つの事柄に意識を集める能力」となる。
例えば、バスケをしている時に、勉強や仕事のこと、隣のコートでやっているバレーに意識が向いている等は誰が見てもわかる集中力の欠如。
しかし、バスケットボールにおいて、自分の内側に意識を集中し過ぎ、外部からの声が届かないのは間違った集中力である。
バスケットボールではリアルタイムに移り変わる不特定多数の外部情報(敵・味方・審判・時間・点差)に意識を集中する。
対して、競争(陸上等)では、他者からの干渉がなく、技術を発揮する権利が保障されるので、技術が発揮できるよう自分の内側に集中する。
同じ集中でも、向けるべき対象が異なる。

【練習は裏切らない・・・訳ではない】

「競争では、練習の成果を発揮するのが試合である」
練習すればするほど、技術が蓄積され、成果がでやすい。
分解練習の積み重ねで成果がでやすい。
ただしバスケットボールは、練習で技術が蓄積されても、対戦相手によって成果が変わる。
「ゲームのためのドリル」が必要であり、「公式ゲームのためのスクリメージ(練習ゲーム)」が必要となる。
例えば、試合ではカットされてしまうパスがスクリメージやドリルではいつもカットされない場合、そのパスが習慣づいてしまい、試合でパスミスをしてしまう原因となる。
つまり、正しい練習をしないと結果的に成果をダウンしてしまうリスクがある。(練習は裏切る)

【バスケに正解はない】

競争では、毎回同じシーンが繰り返される。
闘争では、似たようなシーンが繰り返されるが、相手がどのように妨害してくるかは分からないので、全く同じシーンは存在しない。
よって、どのような選択をしても成功率の大小はあれど、バスケに正解はない。成功すれば正解である。

競争:正解を選択するゲーム
闘争(バスケ):選択を正解にするゲーム

【チームワークとは】

バスケットボールの成果とは、チームの成果(勝敗)となり、個人の成果の集合体のような要素分解ができない。
チーム内の個人個人のベストではなく、チームとしてのベストを追求せねばならない。
チームのベストを追求するために雰囲気が壊れることを怖れてはいけない。
日本人は、競争的チームワーク(協調性や雰囲気づくり)が得意であるが、闘争的チームワーク(衝突を伴った議論、真の団結力)が苦手である。
それを踏まえた上で、チームワークする必要がある。
見かけだけ良い(いわゆる雰囲気が良い)チームではなく、個人がワガママを主張するだけのチームではなく、お互いにリスペクトを持ってチームのベストを追求できるよう何でも言える集団こそがチームワークの良いチームである。

【コミュニケーションとは】

バスケにおいてゲーム中の瞬発的なコミュニケーションの大半は非言語(ハンドサイン、ジェスチャー、表情、感情)である。
言語でのコミュニケーションは、インターバル、タイムアウト、FTでのハドルのみで、インプレイ中に言語コミュニケーションは取れない。
コート内の5人がセイムページ(共通理解)するために必要なのは、言語コミュニケーションで事前に意志を揃え、非言語コミュニケーションで瞬時に共有していく必要がある。
目的を達成したい者は、強い意志を持って自らの大きな声やジェスチャーによって相手にわかるように全身で表現しなければならない。

【感情のコントロール】

バスケでは、感情はコミュニケーションとして機能する。
表出された感情は人種を問わず、一瞬で把握することができる。
内的集中力が高いプレイヤーは感情が可視化されないので、試合に必要なコミュニケーションが取れない。
感情は一瞬で共有される。それはチームメイトに留まらず、対戦相手や審判や観客にまで波及される。
感情を見られているならば、意図を持って見せなければならない。

【感情に必要な能力】

必要となる能力は、
・感情を可視化させる表出力
・感情を通常に戻す回復力
・感情を表出(または抑制)させる判断力
感情の表出がチームや個人にとって不利益にならないように、チーム全体で理解を統一する必要がある。
感情の表出と抑制と回復は、再現性を持たせ、意識的・意図的に行う。

【気持ちの入ったプレイ】

「気持ちはの入ったプレイ」とは、非科学的で、精神論で、根拠のない見解のように思われ、拒否反応を示されることもある。
しかし、バスケットボールのような団体闘争において「気持ちの入ったプレイ」は必要不可欠である。
「気持ちの入ったプレイ」とは、感情によって統制されるプレイのことである。
バスケでは、感情を表出させ、共有し、コミュニケーションを成立させ、団体集中状態を作り出す必要がある。
理性でゲームを組み立て(実力差があればこれだけで勝てる)、感情でゲームを決める(勝敗を分ける)
トレーニングは身体、技術、戦術だけでなく、理性と感情へのアプローチが必要となる。

【バスケットボールは闘うスポーツである】

日常生活において感情を表出させることが良くないことだと思っていたとしても、コートの中ではコート外の常識(闘争にマイナスに働く要素)を取り除かなければならない。
コート内では、上下関係も、敬語も、愛想笑いも、遠慮も、要らない。
必要なのは、チームの成果(勝利)のために行動することである。

「バスケットボールは闘わなければならない」

【LTAD(長期的なアスリート育成)モデル】

「LTAD」とは「Long-Term Athlete Development」の略であり、「長期的なアスリート育成」と日本語では訳される。
日本のバスケだと、U12、U15、U18、一般(大学等、社会人等)と学校に合わせた4区分で、それぞれで日本一を目指すのが特徴となり、長期育成において様々な弊害がある。
欧州では、世代別のチームの勝利よりも個人の成長を重要視するようLTADによって管理し、国全体で優秀なプレイヤーの発掘および育成をして、代表チームの勝利に結びつけている。(国や地域やチームによっても異なるが、傾向としては日本よりも欧州の方が意識は強い)
中学生(U15)までは競争という意識だが、高校生(U18)からは闘争という意識を持ち、大学生からはチームの勝利という意識を強く持つ。
ただし、FUN(楽しい)であることは忘れてはいけない。

【感情をコントロール(表出と抑制)について考えてみる】

キーワード
・成果(勝利)につなげるための感情のコントロールである
・表出と抑制をチーム全体で揃えられるレベルの必要がある
・相手への感謝とリスペクトが前提である
・バスケットボールの価値を損なってはいけない

例えば、第2Q終盤、点差は接戦で、自陣のベンチ前で3Pシュートを放った。
そこに相手Defが思いっきりぶつかり、プレイヤーが倒れたが笛が鳴らなかった。
下記の反応の違いによるイメージの差は?
・【コーチだけ反応大】該当選手:無反応、コート:無反応、ベンチ:無反応、コーチ:反応大
・【該当選手だけ反応大】該当選手:反応大、コート:無反応、ベンチ:無反応、コーチ:無反応
・【全員反応大】該当選手:反応大、コート:反応大、ベンチ:反応大、コーチ:反応大
・【全員無反応】該当選手:無反応、コート:無反応、ベンチ:無反応、コーチ:無反応

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Q1、表出すべき感情:どんな時に、誰に対して、どのような感情を表出すべきか?
Q2、抑制すべき感情:どんな時に、誰に対して、どのような感情は抑制すべきか?