対オンボールピックコンビネーションディフェンス

新型コロナ騒動のせいで体育館が閉鎖され、一か月ほどバスケと離れていました。
体も頭も劣化していったので、もう一度使っていきたいと思います。
さて、今回はオンボールピックディフェンスです。
今までも何回かオンボールピックディフェンスについて取り上げましたが、今回は体系化して深堀って行きます。

【対オンボールピックコンビネーションディフェンス行まとめ】
☑オフェンス戦術を理解する
☑相手の強みと弱みを理解して選択する
☑コミュニケーションをとってコンビネーションディフェンスをする

【オンボールピックとは】

オンボールピックとは、ボールマンのディフェンスに対して行う2対2のスクリーンプレイのことです。
代表例としてはピック&ロールがあります。
オンボールピックディフェンスを考える時は、オンボールピックオフェンスへの理解(準備)とディフェンス同士のコミュニケーションが必要となります。
クラブチームレベルであれば、あらかじめファーストオプションを決めて、あとは柔軟に程度で大丈夫だと思います。

【ピックプレイは三人目が大事】

ピックプレイは2対2のコンビネーションプレイと言いましたが、実際には三人目の動きがとても大事です。
ピック&ロールに合わせて、三人目のオフェンスがリフト(上がる)することで、下記の効果が発揮されます。
・ゴール下のスペースを空ける
・キックアウトからの3Pが狙える
・ウイング経由のダイブへのパスが狙える

同様にディフェンスも三人目がヘルプに入る(スタント)ことで、ピック&ロールを簡単にシュートまで持ち込ませないようにすることができます。

【対オンボールピックコンビネーションディフェンス】

日本バスケットボール協会ならぬ、日本バスケットボール学会が発行しているバスケットボール研究第5号の「バスケットボール競技におけるピックプレイのディフェンスに関する一考察」で一覧化されているディフェンス集を参考としております。

〇がオフェンスです。①がハンドラー(PG)、⑤がピックマン(C)となります。
Xがディフェンスです。x1がハンドラーディフェンス(PG)、x5がピックマンディフェンス(C)となります。
図だと、⑤はスクリーンをかけてストップした状態で終わっています。
①の波線はドリブルしている状態です。
x1とx5の棒線は移動を表します。

〇ショーディフェンス

下記の5種類に分類しています。
1、ハードショー&オーバー
2、ハードショー&ハイロー
3、ハードショー&アンダー
4、ソフトショー&オーバー
5、ソフトショー&アンダー

x5(ピックマンディフェンス)の動きは、1・2・3ハードショー、4・5ソフトショーで区分されています。
x1(ハンドラーディフェンス)の動きは、1・4・オーバー、2ハイロー、3・5アンダーで区分されています。

ショーディフェンスとは、ピックマンディフェンスがスイッチするように飛び出し、ボールマンの動きが止まったら素早く元のマークマン戻る守り方です。
ショーのことをヘッジ、ハードショーをハードヘッジとも呼びます。
1・2・3ハードショーと4・5ソフトショーはx5の動きです。
1・2・3ハードショーは、x5が前方に飛び出す形にショーディフェンス(ハードショー)することです。
メリットは、ハードショーすることで、①をびびらせて後方に下がらせたり、ロスト(ボールを失う)させることが可能となります。
デメリットは、そのままスピードで置き去りにされてしまい、安易なレイアップをされてしまう可能性があります。

4・5ソフトショーは、x5が斜め(ややスイッチ気味)にショーディフェンス(ソフトショー)することです。
メリットは、x5が①に安易に抜かれることが少ない点です。
デメリットというより弱点として、スネイクというドライブに対して脆さがあります。

1(4)オーバー、2ハイロー、3(5)アンダーはx1の動きです。
1(4)オーバーは、x1がx5と⑤よりも上でスクリーンを通り抜けることです。
図ではオーバー(チェイス)と一括りにされていますが、横の動きでかわす場合はファイトオーバーと呼び、完全に体の向きを変えて正面に追いかける場合をチェイス(追跡)と呼び分けます。
1(4)オーバーのメリットは、リジェクト(スクリーンの反対側にドライブ)を防ぐことができることと、アウトサイドシュートを封じることができる点です。
1(4)オーバーのデメリットは、スクリーンを上から抜けるので、2対1が生まれてしまうリスクがあります。
同時に①(オフェンスのG)とx5(ディフェンスのC)というスピードのミスマッチが発生するリスクもあります。

2ハイローはx5と⑤の間を通り抜けることです。
一度x5がスイッチして①のドライブとシュートをケアしつつ、x1がディフェンスできる状態になったら再度スイッチしてマッチアップを元に戻します。
2ハイローのメリットは、ハンドラーを優先してケアすることができます。
2ハイローのデメリットは、ピックマンがノーマークになりやすい点です。
ピックマンよりもハンドラーの得点能力が高く、優先してケアする時に使用します。

3(5)アンダーはx5と⑤よりも下で通り抜けることです。
ハイローとの違いはスクリーンをかけた⑤の上を通り抜ける(ハイロー)か、下(アンダー)を通り抜けるかです。
上を通り抜けた方が本来の自分のマークマンをである①に着くまでの時間は早いです。
しかし、⑤にダイブされるリスクが高まります。
下を通り抜ける時(アンダー)、x1が⑤を一瞬抑えることで、⑤のダイブを防ぐことがメリットとなります。
その後、x1とx5でスイッチする際、ハイローよりもタイミングの誤差がでるので、一瞬①がノーマークになるリスクがデメリットです。
なので、①のアウトサイドが怖い時はアンダーよりもハイローの方が良いです。
距離はありますが、①のドライブのコースにはx1がいるので、アンダーでドライブを抑えることは可能です。

〇ウォール

6、ハイウォール&オーバー
7、ハイウォール&アンダー
8、ローウォール&オーバー
9、ローウォール&アンダー
10、ハイウォール&アイス
11、ローウォール&アイス

x5(ピックマンディフェンス)の動きは、6・7・10ハイウォール、8・9・11ローウォールで区分されています。
x1(ハンドラーディフェンス)の動きは、6・8・オーバー、7・9アンダー、10・11アイスで区分されています。

いきなり、すみません。
私の中のウォールの定義は、ピックマンディフェンスと両ワンパスアウェイのディフェンス二人が協働して守る方法です。

なので、今回の図で何を説明したかったのかは良く分かりません。
恐らく「ショーディフェンスが前に出るのに対して、ウォールは後ろに下がる動き」の対比として出ているのだと思います。
個人的には「サグ」や「ドロップ」と呼ぶことの方が多い気がします。
気を取り直して、図に合わせてウォールで解説します。

6・7・10ハイウォール(サグ)は、x5が自分のマークマンである⑤よりも後方で守っています。
8・9・11ローウォール(ドロップ)は、x5がさらに低く、ペイントのリング近くまで下がって守っています。

6・8オーバーはx1がスクリナーである⑤よりも前で抜けることです。
7・9アンダーはx1がスクリナーである⑤よりも後ろで抜けることです。

・アイス

x1(ハンドラーディフェンス)によるアイス(10・11)という守り方です。
10・11アイスはボールをウィーク側に流し、ピックマンディフェンスとのサグ(ウォール)との協働して、コーナーでダブルチームします。
ブルーと呼ぶこともあります。

x1は⑤にスクリーンをかけられたら、⑤が背中になるように向きを変えます。
そして、スクリーン側(⑤)の方には絶対にドライブされないようディフェンスし、①にリジェクトを選択させます。
x1とx5でサイドラインに追い詰め、コーナーでダブルチームします。

アイスは、ウィークサイドやコーナーに追い詰める性質上、ウィングピックには有効ですが、ハイピックではほとんど使用しません。

〇スクイーズ

12、スクイーズ&オーバー
13、スクイーズ&アンダー
14、スクイーズ&アイス

スクイーズとは、押しつぶすという意味です。
12・13・14ピックプレイで使われるスクイーズとは、スクリナーディフェンスがスクリナーをリングから遠ざけるように押す守り方です。
立ち位置的にはウォールと似た形になっていますが、x5が自分のマークマン(⑤)から離れたらウォール(サグ)、接触し押したらスクイーズとなります。
ウォール(サグ)の対比でメリットはピックマンディフェンスへの警戒が強く、ダイブもポップもやられにくくなります。
また、くっつくことで面接を取らなくなるので、x1がアンダーする時に最短距離で抜けることができます。
デメリットはハンドラー(①)への警戒が弱くなり、ドライブやプルアップをされやすくなります。

〇フロント&オーバー

15、フロント&オーバー
16、フロント&アンダー

15・16フロントとは、スクイーズが後方から接触するのに対して、前方から接触するディフェンスです。
これ、私大好きで、よくやります。
⑤がx1にスクリーンをかけようとしたら、x5が間に入ってバンプすることで⑤のスクリーンをキャンセルさせます。
キャンセルすることがなかったとしても⑤とx1の間にx5がいるので物理的にスクリーンをかけることが難しくなります。
デメリットとしては、バンプに合わせてゴール方向へダイブされるリスクがあります。

〇ハードトラップ

17、ハードトラップ
18、ソフトトラップ
19、アーリートラップ
20、フロント&アーリートラップ

17・18・19・20トラップとはダブルチームをすることです。
17ハードトラップとは①のドリブルに合わせてx1がハードショーし、x5がブリッツ(急にダブルチームに行くこと)します。
ハードショーの方は当たりが強いので、ハンドリングが得意でないハンドラーは嫌がると思います。
しかし、ハンドリング技術が優れているとリトリート(後方に下がるドリブル)して、簡単にかわされてしまうリスクがあります。
ハードトラップは「レッド」とも呼ばれています。

18ソフトトラップとは①のドリブルに合わせてx1がソフトショーし、x5がブリッツ(急にダブルチームに行くこと)します。
ハードショーに比べて、楽にかわされるリスクが少ない半面、ダブルチームが成功する可能性も減ります。

19アーリートラップとは、⑤がスクリーンをセットした瞬間(①がドリブルを突く前)にダブルチームを仕掛けることです。
クラブチームだと、このアーリートラップが最も成功率が高いと思います。
相手にスカウティングされて、アーリートラップがくるとばれてしまうと、崩すのも簡単になります。
「ソフトトラップ < ハードトラップ < アーリートラップ」の順でリスク(簡単に突破され失点する可能性)とダブルチーム成功率が高まります。

20フロント&アーリートラップとは、先述のフロントとアーリートラップの組み合わせです。
個人的には、フロントは好きでよくやっていましたが、そこからアーリートラップという発想がなかったので、気になる戦術です。
今度やってみます。

〇スイッチ

21、ハードスイッチ
22、ソフトスイッチ
23、アーリースイッチ
24、フロント&アーリースイッチ

21・22・23・24スイッチとはマッチアップを交替することです。
21ハードスイッチは、ハードショーの動きから、戻らずにいることです。
22ソフトスイッチは、ソフトショーの動きから、戻らずにいることです。
23アーリースイッチは、スクリーンと同時にスイッチして、戻らずにいることです。
24フロント&アーリースイッチは、フロントからスイッチして、戻らずにいることです。

【対オンボールピックコンビネーションディフェンスのまとめ】

コンビネーションディフェンスで大事なのは、「準備」と「コミュニケーション」となります。
準備とは、どういったオフェンス戦術でくるのか?
それに対するディフェンス戦術(準備)は何なのか?
オフザコートで知識として学ぶことも準備です。
また、コートで相手が予期せぬ動きをすることで混乱させることも、相手の準備を潰すことになります。
オフェンス同士の意思疎通が大事なように、ディフェンス同士も意思疎通(コミュニケーション)が大事となります。

私自身、今回深堀り(研究)することで、曖昧だったピックプレイの守り方を体系的に理解することができました。
バスケットボール学会にスペシャルサンクスです。
コロナ騒動が落ち着いたら、今回紹介した24通りの動き全てを動画に収めることを目標にします!