バスケにおける良いプレイと悪いプレイの定義

先日、「良いプレイと悪いプレイの違いが分からない」という意見を聞きました。
プレイを見れば、感覚的にはなんとなくわかるんだけど、言語化すると難しいということに気付きました。
そこで、あらためて「バスケにおける良いプレイと悪いプレイ」を定義づけしたいと思います。

【期待値による判断】

COSMOS女子ではスタッツをつけております。
そこからポゼッション(一回の攻撃)ごとの期待値(予測される得点)を算出しています。

COSMOS女子平均:ポゼッション数75.5回、得点57.9点、期待値0.77点
Wリーグ全体平均:ポゼッション数73.2回、得点68.2点、期待値0.93点

「ポゼッション数 = シュート数 + ターンオーバー数 - オフェンスリバウンド」となります。
「ポゼッション期待値 = 得点 ÷ ポゼッション数」となります。

例えば、2回のオフェンスで1本の2Pを決めると、「2点 ÷ 2回 =1点」が期待値となります。
3回のオフェンスで1本の3Pを決めると、「3点 ÷ 3回 =1点」が期待値となります。
当チームだと、低いプレイヤー(Aさん)は0.5点、高いプレイヤー(Bさん)だと1.2点の期待値となっております。

各期待値をチームのポゼッション数とかけた場合、下記の結果となります。
Aさん:0.5点 × 75.5回 = 37点
Bさん:1.2点 × 75.5回 = 90点

もし、全く同じメンバーで、AチームはAさんが全部シュートをうって、BチームはBさんが全部シュートをうった場合は、理論上は37-90の53点差となります。
理屈だけで考えると、オフェンスは点がとれるプレイヤーに集中した方が効率よく点数を見込めることになります。

結論:期待値からプレイの質を判断すると、「チーム平均よりも高い期待値だと良いプレイ、チーム平均よりも低い期待値だと悪いプレイ」ということになる。

【プレイの終わり方による判断】

プレイの終わり方で判断してみた。
良い終わり方から下記の通りに分類した。

1、シュートが成功する
2、シュートが失敗する&オフェンスリバウンドがいる
3、シュートが失敗する&オフェンスリバウンドがいない
4、ターンオーバーで終わる&ボールがデッドになる
5、ターンオーバーで終わる&ボールがライブになる

1、シュートが成功する
得点を奪うのが目的なので、シュートが成功すれば、多少過程が悪くても良いという判断ができる。

2、シュートが失敗する&オフェンスリバウンドがいる
たとえシュートが失敗しても、オフェンスリバウンドに絡む選手がいれば、セカンドチャンスを狙えるうえ、ディフェンスリバウンドをとられたあとにプレッシャーをかけることで、相手のトランジションを遅らせることができる。

3、シュートが失敗する&オフェンスリバウンドがいない
オフェンスリバウンドがいないと、ディフェンスはリバウンド後に容易に速攻のパスを出すことができる。
速攻をだされると、イージーなシュートが発生しやすく、失点をしやすくなる。

4、ターンオーバーで終わる&ボールがデッドになる
トラベリングなどのバイオレーション、オフェンスファウル、アウトオブバウンズが該当します。
ターンオーバーで終わってしまうと、得点が入る可能性がゼロになります。
でたらめでも50本シュートをうてば何本かは入りますが、全部ターンオーバーで終わると期待できる得点は0点です。
ターンオーバーは、リバウンド同様、勝敗に大きな影響を与える要素となります。

5、ターンオーバーで終わる&ボールがライブになる
ドリブルミスなどによるスティール、パスミスによるインターセプト(パスカット)が該当します。
ターンオーバーしてもボールがライブの状態なので、相手の速攻を誘発してしまいます。
特に、トップの位置でのターンオーバーはノーマークのワンマン速攻となるので失点期待値が限りなく二点に近づくので絶対やってはいけないプレイとなります。
一見すると能力が高いチームでも、ライブでのターンオーバーが多いチームは試合に負けることが多いのが特徴となります。

結論:プレイの終わり方で判断すると、「シュートで終わると良いプレイ、ターンオーバーで終わると悪いプレイ」ということになる。

【想像力と実行力による判断】

期待値などの数字から離れてみました。
バスケットボールは「1状況把握→2判断→3実行」の繰り返しとなります。
しかし、1状況把握→2判断を飛ばして、いきなり3実行をすると、格下には通用しても格上には通用しません。
そして同じミスが続いた時に、客観的には「そのプレイはうまくいかないでしょ、何をしたかったの?」という見え方になります。

よくある例としてはウイングからウィークサイド側にドライブをする。
→抜けなかったのでエンドライン付近でドリブルを止めて、ボールをキープする。
→ディフェンスにスティックでプレッシャーをかけられる
→トップにボールを返そうとパスをする
→パスカットされて、そのまま速攻で失点
などがよくある例だと思います。

1状況把握をするには視野が必要ですし、2判断をするには経験やバスケIQが必要となります。
一度失敗をしたら振り返り、対策をとることで、失敗の要因を減らしていくという作業するか、身体能力を向上させないと、この状態から抜け出すことができません。

「想像力と実行力による判断」に話を戻すと、相手ありきでゴールまで想像できているか?
また、想像した動作を実行できる身体能力やスキルがあるか(まで含めて想像できているか)?

結論:「想像力×実行力を満たしていれば良いプレイ、満たしていなければ悪いプレイ」と判断することができます。

【積極性と消極性による判断の錯覚】

よく使われる言葉として「積極性を持て、まずはシュートを狙え」について考えたいと思います。
「積極的なプレイは良くて、消極的なプレイは悪い」と論じられることが多いです。
ただし、私はそう思いません。

クラブチームだと、普段からシュート練習をしないプレイヤーが、試合になると3Pをうったりすることがあります。
得点期待値の低いプレイヤーが積極的にシュートを放っても、得点は伸びません。
反論として、「まずシュートを狙わないと、ディフェンスが引いてしまう」という意見があったりしますが、ディフェンス目線だとシュートが入らないプレイヤーがどんどんシュートをうって、外してくれるのであれば、あえてそこのポジションはディフェンスを甘めにします。

あくまでも自分に与えられた役割に対して、積極性を持てば十分だと思います。
中学の時に全国優勝をしたチームの友人は、「チームで決められたプレイヤー以外はレイアップ以外のシュートをうってはいけない」というルールがあったそうです。
その友人はオフェンスリバウンドとディフェンスという役割に積極性を出し、実際に全国を優勝したそうです。
以上のことから、浅井考えで「積極的になれ」という言葉は目の前の試合を犠牲にしてしまうと考えております。

ところが、この理論にも問題があります。
前出の友人は、全国優勝という実績を引っ提げて、高校にスポーツ推薦で進学した後、シュート力のなさを理由にとても苦労したそうです。
育成年代は目先の勝利よりも、成長させることが優先されますので、可能性が狭まるような指導はよくないと思います。
社会人でも同様に、可能性や楽しさを損なわれるようでしたら、間接的にチームに迷惑をかけてでも、積極的にシュートをうった方が全体の納得感が高まると思います。
また、試合ではなく練習においては、積極的なプレイをして、積極的にミスをして、ミスの原因を考えて改善し、能力や技術だけでなく、バスケIQも高めていった方がよいでしょう。

結論:「積極性からは一概には、良いプレイと悪いプレイの判断はできない」ということになります。


まとまりのない長文になってしまいました。
実は、私が言いたかったのは、「積極的=良いプレイ」とは言い切れないよ。
という一点でした。