ゾーンの守り方~ストレートゾーン・マッチアップゾーン・スライディングゾーン~

今回はゾーンディフェンスの守り方についてです。
よく「マンツーができないチームにゾーンなんかできない」という理由で、ゾーンをやらないチームがあります。
しかし、私は「ゾーンから学びマンツーに活かし、マンツーから学びゾーンに活かす」。
もしくは「練習のゾーンディフェンスから学び、試合のゾーンアタックに活かす」と思います。
ゾーンは能力で自分達に上回っているチームにも勝てる可能性がある守り方なので、練習でも試合でも積極的に取り入れることをお勧めします。
当チームでは練習ゲーム(スクリメージ)のうち1本は必ずゾーンをやるようにしています。
ゾーンはメリットがたくさんある分、デメリットも多いディフェンスとなります。
マンツーマンをベースに、ゾーンも取り入れるのが理想的です。

【ゾーンディフェンスのメリット】

〇常にヘルプがいる

マンツーだと三線が意識的にヘルプポジションに入らないといけませんが、ゾーンの場合はペイント付近にディフェンスが立っているので、ヘルプが常にいる形になります。
常にヘルプがいるので、ドライブに強いディフェンスとなります。

〇高さのミスマッチに対抗できる

ペイントエリアのディフェンス同士の距離が近いので、ポストのミスマッチに対してヘルプしやすい形となります。

〇対ゾーンアタックを持っていないチームを混乱させられる

クラブチームには、普段からマンツーマンでしか練習していないチームが結構あります。
その場合、ゾーンを敷いた途端に、チームの連携が取れずに、自滅させることが可能となります。
また、マンツー→ゾーン→マンツーと変えることで、流れを変えることも可能となります。
ゾーンアタックでのピックプレイもありますが、クラブチームレベルだと練習不足から現実的には選択肢から外させることが可能となります。

【ゾーンディフェンスのデメリット】

〇ギャップに弱い

位置を守る都合上、意図的にオーバーロードされると数的有利(アウトナンバー)を作られてしまいます。
数的優位を使ってギャップに立たれると、オープンのミドルや3Pを撃たれる可能性があがります。
特にシューターがいるチームに対しては、陣形を崩してでもシュータを優先して守る必要もあります。

〇引継ぎが難しい

コミュニケーションが取れないチームだと、オフェンス一人に対して二人ついたりと、マッチアップの受け渡しがうまくいかずに、フリーの選手が生まれてしまう可能性があります。

〇マッチアップを指定できない

マンツーであればオフェンスに適したディフェンスをアサインすることができますが、ゾーンの場合はできません。
意図的にディフェンスが弱いエリアにエースを配置したり、インサイドディフェンスが弱い方に大きいプレイヤーを配置したりすることが可能です。

〇スクリーンアウトが難しい

すぐ近くにマッチアップするプレイヤーがいない場合もあるので、オフェンスリバウンドに飛び込まれやすくなります。
スクリーンアウトの意識が低いと、何人もオフェンスリバウンドに飛び込まれてしまう可能性があります。
オフェンスリバウンドからのセカンドチャンスはディフェンスが整っていない(カオス)ので失点期待値が高いピンチの状態となります。

【ゾーンの守り方による分類】

〇ストレートゾーン

2-3や3-2などのアライメント(配置)だけを決めるゾーンディフェンスです。
細かい動きなどはプレイしながら調整していきます。
初めて会ったプレイヤー同士でマンツーをやると、決まり事がないので、3線がいない状態が発生する可能性があります。
そんな時は即席ながらもゾーンを組むだけで、ヘルプのディフェンスを配置することができます。
相手チームがゾーンオフェンスのオプションを持っていると簡単に崩されるというデメリットはあります。

ストレートゾーンの守り方のコツ

ゾーンの一般的な守り方は省きます。
ストレート、スライディング、マッチアップの違いに特化したストレートゾーンの守り方です。
ストレートゾーンの特徴はただゾーンディフェンスを敷くことです。
チーム内の決め事もなく、一人の人間が大きく動くと、そこを起点に崩れやすくなります。
なので、あまり大きく守らず、内側を固めることを優先した方が無難です。
一般的なゾーンアタックが最もはまりやすい守り方なので、ノーマークはどうしても発生してしまいます。
なので、思い切って捨てるオフェンスプレイヤーを作ることです。
ワイドオープンでうたせるのはさすがに問題ありますが、シュートチェックはしたうえで、期待値の低いプレイヤーにシュートをうたせるのがコツとなります。

〇スライディングゾーン

ベテランプレイヤーがよく「本当のゾーンはとても疲れる」と言うのを何度か聞いたことがあります。
ゾーンディフェンスのDVDなんかでもこのよく動くスライディングゾーンを見かけたりします。
スライディングゾーンとは、自分のエリアにいるオフェンス全員をマークする(地域を守る)ディフェンスです。
絶えず動き、ポストにボールがきたら二人、時には三人がボールを奪いにプレッシャーをかけにいきます。
最近女子が対戦したブラックガールズがこのスライディングゾーンで、ポストにボールが入るとディフェンスの激しいプレッシャーがくるので、結構苦しみました。

スライディングゾーンの守り方のコツ

スライディングゾーンは、自分が守るべきエリアをあらかじめ決めて、絶えず動きながらエリアにいるオフェンスに満遍なくプレッシャーをかけます。
特にボールとポストマンに対しては複数のディフェンスが同時に対応することもあります。
マッチアップゾーンとは異なり、引継ぎという概念は薄い守り方。(引き継ぐというより、自分のエリアに入れば自然と担当する)

〇マッチアップゾーン

ゾーンディフェンスは本来、人ではなく地域を守る戦術となります。
しかし、マッチアップゾーンはゾーンでありながらもマンツーのように、ノーマークを作らないよう心がけるディフェンスとなります。
マッチアップするプレイヤーがいない状態が発生したら、誰かがマークしている近くのオフェンスをマークし、玉突き式でずれるタイプ(ほとんどこっち)と、思い切ってノーマークのプレイヤーの位置まで移動してしまうタイプ(チェイス)があります。
最近は、マッチアップ色が強いゾーンが多いがします。
マッチアップゾーンの利点はオーバーロードをしても、数的有利が作れないので、従来のゾーンアタックが使えない点です。

マッチアップゾーンの守り方のコツ

マッチアップゾーンは、アライメント(初期位置)こそゾーンを敷きますが、マンツーマンのように人を守るゾーンです。
ノーマークを作らないようにするために、確実な引継ぎが必要となります。
トーク(何番OK、何番よろしく)とピストル(引き渡すときと、マッチアップするときにマークマンを指さす)を徹底すると、引継ぎがしやすいです。

【アライメントによる分類】

〇ローゾーン

ローゾーンとは、下のポジションに三人を擁するゾーンです。
2-3(1-1-3)、2-1-2が該当します。
最も一般的なゾーンディフェンスとなります。
良く使われるので、ゾーンアタックも用意しているチームが多いです。

〇ハイゾーン

ハイゾーンとは、上のポジションに三人を擁するゾーンです。
3-2、1-2-2が該当します。
上にプレッシャーをかけやすく、3Pを封じやすいです。
ディフェンスリバウンドが取りにくく、コーナーが弱点となりやすいです。
なんとなく崩せてしまうチームはありますが、具体的なゾーンアタックを用意して、練習しているチームは少ない印象です。

〇スペシャルゾーン

スペシャルゾーンとは、上記に分類されない特殊なゾーンです。
1-3-1が該当します。
ボールの位置によって1-3-1から2-1-2に変化します。
稀(2年に1回ぐらい)に見ます。

【層の数による分類】

〇二層式

二層式とは、ボールからリングまでの直線上にディフェンスが二人いるゾーンです。
1-2-2、3-2、2-1-2、2-3が該当します。
基本的にゾーンは二層式です。

〇三層式

三層式とは、ボールからリングまでの直線上にディフェンスが三人いるゾーンです。
1-3-1、1-1-3が該当します。
三人いるのでドライブは仕掛けにくくなります。

【プレッシャー度合いによる分類】

〇タイトゾーン

タイトゾーンとは、ゾーンなので三線がいるという前提で、一線が3Pラインを越えてプレッシャーをかける攻撃型のゾーンです。
広がり過ぎると崩れやすい欠点もあります。

〇ルーズゾーン

ルーズゾーンとは、一線は3Pラインを越えないように特にポストマンに対して固く守る、守備型のゾーンです。
引いて守るので、ボールに対してプレッシャーをかけにくいのが欠点となります。
個のプレイヤーごとにタイトとルーズを使い分けるのではなく、チームとしてタイトに守るから三線の意識を強めるのか、みんなでルーズに小さく守るのかを統一しておく必要があります。

【ゾーンの守り方~ストレートゾーン・マッチアップゾーン・スライディングゾーン~のまとめ】

ゾーンディフェンスにはメリットとデメリットがあり、万能ではないものの有用なオプションとなります。
また、相手がゾーンディフェンスをして来たときにゾーンアタックができるようになるためにも、チーム練習ではマンツーマンと並行してゾーンディフェンスを取り入れることを、改めておすすめします。
2-3と3-2の両パターンを用意しておけば十分だと思います。