オフェンス戦術区分~フリー、モーション、オプショナル、セット~あなたはフリー派?セット派?

【オフェンス戦術四行まとめ】
☑フリーオフェンスとは、プレイヤーの自由意思のオフェンス
☑モーションオフェンスとは、約束事のあるフリーオフェンス
☑セットオフェンスとは、決まった方法で攻めるオフェンス
☑オプショナルオフェンスとは、ロジックツリーに従って攻めるオフェンス

【フリーとセット以外の選択肢】

対マンツーマンオフェンスと対ゾーンオフェンス(ゾーンアタック)。
オールコートを使ったファーストブレイクとセカンダリーブレイク、ハーフコートになればフリーオフェンスと一定の条件で発動するセットオフェンス。
大体こんな感じにとらえていました。

モーションオフェンスという言葉は、昔からよく聞くけど、なんだか良く分からないオフェンスでした。
セットオフェンスのひとつのプレイのこと?
ただでさえオフェンスの種類は複雑なので、今まで曖昧でしたが、「バスケットボールの教科書2~戦術と戦略の核心」にてわかりやすく説明されており、やっと理解することができました。
鈴木良和先生にスペシャルサンクスですね。
バスケットボールの教科書2よると、オフェンス戦術はフリー、モーション、オプショナル、セットの四つに区分けできるそうです。

【フリーオフェンス】

フリーオフェンスとは、プレイヤーがそれぞれ状況を分析して、その場にあった最適な選択を自由に行うオフェンスです。
その場で集まったピックアップゲームだと、当然フリーオフェンス一択になります。
また、クラブチームのように人の入れ替わりが多いチームもフリーオフェンス一辺倒のチームが多いです。
フリーオフェンスは個人の能力がそのまま試合に反映されます。
高いバスケIQを持っているチームであれば、フリーオフェンスの中でも色々なコンビネーションプレイを生み出せます。
正しい判断力がないと、チームオフェンスが機能せず、個の力で勝負してしまうことになります。

【モーションオフェンス】

モーションオフェンスとは、5人全員がスクリーンやカットを使って一つの場所に留まらずにポジションチェンジしながら攻めるオフェンスです。
フリーオフェンスから何も発展しないと、個の力を磨いてもらうしか、チーム力の向上ができません。
そこで、フリーオフェンスで発見したことを共有し、「こうなったら、必ずこれをする」などという約束事を作っていきます。
広義のモーションオフェンスは上記のように決まり事を作ったフリーオフェンスです。
狭義のモーションオフェンスは下記のようにもっと強烈な方向付けをします。

〇ドリブル・ドライブ・モーションオフェンス

ボールを持ったら積極的に1対1を仕掛ける約束事のオフェンスのことです。

〇パッシング・モーションオフェンス

ギブ&ゴーを繰り返して、ディフェンスを動かして攻める約束事のオフェンスのことです。

〇DHO・モーションオフェンス(5out)

【セットオフェンス】

セットオフェンスとは、コールされた時に発動し、チームとして必ず決まった方法で攻撃することです。
ノーマークになりやすいプレイが効率的に組み込まれているので、高い得点期待値が見込まれるプレイとなります。
しかし、相手に動きを読まれると、対策することで、プレイをつぶすことができます。

例えば、UCLAカット。
UCLAカットとは、トップがハイポのスクリーンを使って、ペイント方向にカットするプレイです。

ということは、まずトップからウイングへのパスをディナイして入れさせなければ成り立ちません
または、ハイポがバンプしてスクリーンをキャンセルさせても成り立ちません
このようにやることが分かっていれば対策することで、セットオフェンスをキャンセルさせることができます。
なので、セットオフェンスを向上させるには、次の2つの方法があります。

〇セットオフェンス対策の対策1、技量をつける

UCLAがばれて、相手がウイングにディナイをしてきた。
だったら、ディナイでもボールをもらえる技術を身に付ければ解決できます。
例えば、Vカットだけではディナイが外せずボールをもらえないとしたら、ロールカットという技術を身に付け、ウイングの個の力だけでボールをもらえるようにする。
バンプされてスクリーンまで行けないなら、先にスクリーンをセットしてしまう。
またはチェンジオブディレクションでスクリーンを読ませない。

〇セットオフェンス対策の対策2、セットオフェンスを読ませない

箇条書きにすると、
・頻度を減らす:ポゼッションを続けて連続してやらないようにします。1つのパターンにつき1ピリオドで1~2回もやれば十分かと。
・複数種類用意する:1種類だと読まれるので、同じアライメントから2パターン以上あるといいですね。
・コールネームを変える:1番というコールであれば、11番でも21番でも31番でもいいとする。1試合でばれることはないと思います。
・カモフラージュを挟む:UCLAの前にAIを挟む。ZIPを挟むなどです。カモフラージュは囮なので、ゴールを狙わなくて大丈夫です。

このように、セットオフェンスも繰り返しチャレンジし、失敗を重ねて、失敗理由を一個ずつ潰して改善しないと完成度が高まりません。

【オプショナルオフェンス】

オプショナルオフェンスとは、シチュエーションごとの選択肢をあらかじめ用意し共有しておき、状況に合わせて選択することです。
プリンストンオフェンスはまさにオプショナルオフェンスとなります。

画像のように、アライメントを形成したら、エントリー(最初の動き)を選択します。
ハイポパス、ウイングパス、ヘルプサイドパスの3つからボールマンの判断でエントリーします。
例えば、ヘルプサイドパスを選択したら、次にチンで攻めるのか、フレアで攻めるのかを選択します。

先ほどのセットオフェンスの項目で説明したUCLAでウイングパスをディナイされた時、セットオフェンスだとウイングでもらえる技量を高めることで対策の対策をしました。
しかし、オプショナルオフェンスの場合は、別の選択肢を用意することで対策の対策をします。
例えば、ディナイがきついのならば、UCLAを諦めてバックドアを仕掛けます
相手ウイングにトップがドリブルダウンでリプレイスし、バックドアをしたFがトップにリプレイスします。
いわゆるジッパーの動きですね。

もし、UCLAしか選択肢がなければ、無理矢理パスしてターンオーバーをするか、攻められずにフリーに切り替えるかになります。
どの状態からでも共通された選択肢が2個ある状態でしたら、フリーに切り替える必要なく無理なくオフェンスできます。

【オフェンス戦術相関図】

オフェンス戦術は繰り返すごとにフリー→モーション、またはセット→オプショナルと昇華していきます。
フリーオフェンスは緩急、スピードなど個人技で崩すところからスタートして、阿吽の呼吸や約束事を増やして、モーションオフェンスに昇華させます。
セットオフェンスは自由度がない反面、効率化されたチームプレイの状態から、パターンを増やしてオプショナルオフェンスに昇華させます。
相関図にしてまとめると、より理解しやすくなります。

【フリー派orセット派、突き詰めるならセットが大事】

セットオフェンスは継続的な反復が必要なため、練習頻度が少なく、メンバーの入れ替わりがあるクラブチームで取り組むのは結構大変です。
特に感覚だけでバスケをやってきた人にとっては、やりづらさしかない場合もあります。
しかし、セットオフェンスの導入はフリーオフェンスにも活用できます。

例えば、下記の関係性となります。
バスケ:セットオフェンス - フリーオフェンス
将棋・囲碁・オセロ:定石を使う - 定石を使わない
料理:レシピを見て料理 - レシピを見ずに料理

普段から一切レシピを見ずに感覚だけで料理している人にレシピ通りに作ることを強要したら嫌がると思います。
ただし、レシピを見てバリエーションを増やしていった方が長期的には料理が上手になると思います。
将棋・囲碁・オセロなども、初心者は定石を知るだけで勝率があがります。
バスケのセットオフェンスも一緒です。

セットオフェンスは、複数のスクリーンが効率的に組み込まれていることが多いです。
これは、フリーオフェンスの自然発生では生まれにくいものです。
しかし、セットオフェンスを繰り返すことで、経験が加わり、思考力が高まると、フリーオフェンスでも狙えるようになります。
なので、継続して練習できる環境のあるチームは、是非ともセットオフェンスに取り組んでほしいと思います

【まとめ】

セットオフェンスは高い得点期待値が望めるだけではありません。
フリーオフェンスの動きに活かせるので、何のためにやるのかを認識してもらうことで、主体的に取り組んでもらえると思います。
セットオフェンスで理解した動きをフリーオフェンスに取り入れることで、モーションオフェンスへと昇華することもできます。
フリーオフェンスで技量を高め、セットオフェンスでバスケIQを高める二つを並行して進めることをお勧めします。

注意点としてはコーチの自己満足にならないようにすることです。
デザインする」という言葉がありますが、思いつきで単発でやるセットオフェンスは継続性も発展性もなく、やらせる感が強くなり、セットオフェンスが嫌いになってしまうことにつながります。
プレイヤーにとっても有益なデザインを心掛けてください。

なんにせよ、「バスケットボールの教科書2~戦術と戦略の核心」のおかげで、曖昧だったモーションオフェンスを理解できたこと。
モーションオフェンスとセットオフェンスの中間にオプショナルオフェンスというものが存在することを理解できたので、とてもありがたい一冊でした。