クローズアウトでシュートは10%落ちる

【クローズアウト三行まとめ】
☑クローズアウトはダッシュ&ハーキー。
☑両手を高くあげ、相手の鼻めがけて突き出す。
☑コンテストは10%成功率をダウンさせる。

スクリメージ(チーム内紅白戦)で、レギュラーメンバー中心のチームがゲストの混ざったチームに一方的に3Pシュートを決められ続けました。
今回は女子だけの練習だったので、インターバルが少なく、疲れがあったのが主原因です。
ですが、シュートチェックが弱く、そのあとのスクリーンアウトもしないので、セカンドチャンスからの失点もありました。
なので、今回は「クローズアウト」を言語化し、練習に落とし込みます。

【クローズアウト】

「クローズアウト」とはディフェンスの技術で、「3線(ヘルプ)ポジションから1線(ボール)ポジションに切り替わる際、一気に間合いを詰める」ことです。

上図だと、オフェンス1がボールを持っているので、ディフェンス1はボールマンにワンアームでプレッシャーをかけています。
オフェンス2はヘルプサイド(逆サイド)にいるので、マークマンのディフェンス2は、3線ポジションでピストル(マークマンとボールマンを指さす)をしています。

1(左ウイング)から2(右ウイン)にスキップパスされた場合、緩いパスであればディフェンス2がインターセプト(パスカット)を狙いますが、強いパスの場合は、クローズアウトで一気に詰めます。

クローズアウトの足の動きは下記となります。
・マークマンからスリーアーム程度の距離まではダッシュします。
・残りの距離からワンアームの距離はハーキー(スタッターステップ)で小刻みに足をバタバタさせて詰めます。

相手がシュートをせずにドライブした場合は、すっこ抜きされないよう気を付けてください。

【シュートチェック】

クローズアウトの一番の目的は相手にシュートを撃たせないことです。
なので、シュートチェックし、ドリブルを突かせたら成功となります。
一番やってはいけないことはクローズアウトからブロックシュートにジャンプすることです。
折角頑張って詰めたのに、飛んでしまうと、苦労が水の泡です。
なので、シュートチェックに留めます。
具体的に言うと、クローズアウトの時、ハーキーに切り替わるタイミングで「ボール!」と、ボールボイスを出しながら、両手を挙げて、相手の鼻をめがけて手を振り、心理的プレッシャーをかけます。
それでも相手がシュートを撃ってきた場合は、両手を相手の鼻をめがけて突き出し(目に向けて突き出すとフェイスチェックなのでテクニカルファウルの対象)、大きな声で「チェック!」と声をあげ、シュートに影響を与えます。
このシュートチェックの手があるかないかでシュート成功率は10%下がると言われています。

〇バスケットボール競技におけるシュート・コンテストの有効性についての論文

日本ではシュートチェックと呼びますが、アメリカではシュートコンテストと呼びます。

2013年度関西女子学生バスケットボール連盟主催1部リーグ戦上位4チーム同士の対戦である計12ゲームを対象としたデータです。


※試投数と成功率は論文参照、成功本数は左記から算出した数字です。

分析の結果、シュート・コンテストありの試投成功率は33%、シュート・コンテストなしの試投成功率は40%であったと述べています。
ざっくり、シュートチェックをしっかりしたら10%確率を落とすことができるって感じですね。

影響力は、カテゴリー・身長・実力差によって数字は大きく変わると思います。
一般的には、競技レベルが低くなれば影響は大きく、競技レベルが高くなれば影響は小さくなります。
NBAのカリーやハーデンレベルになると、ブロックまでしないとほとんどシュートが入ってしまうイメージです。
neoうめやの向井さんに対しては私のシュートチェックは無意味です。
絶対にシュートを落としません。そういうケースも存在します。

(論文)バスケットボール競技におけるシュート・コンテストの有効性について

〇10%ダウンを当チーム(COSMOS女子)に置き換えた場合

COSMOS女子の2019/11/11現在の82試合の平均FGアテンプト(試投)数80.8本に当てはめてみます。
「2P×80.8本×41%(シュートチェックをしてなかった割合暫定値)×7%=7.3点」
と、かなり都合の良い計算方法です。
一試合に41%しかしていないシュートチェックを100%しっかりやり続けると7.3点分の価値となります。

仮に今までのゲームから失点を7点引いた場合は下記の勝敗となります。
47勝35負(57%):実際の成績
59勝23負(72%):失点から7点を引いた成績
これまた都合の良い計算方法ですが、シュートコンテストを一試合通してした場合、勝率が57%(4回に2回勝利)から72%(4回に3回勝利)にアップします。

ちょうど、82試合がNBAのレギュラーシーズン試合数と一緒だったので、比較してみます。

【2018-19ウエスタン・カンファレンス】
(1位).59勝23負:全シュートをコンテストしたCOSMOS女子の勝敗
1位.57勝25敗:ゴールデンステイト・ウォリアーズ
2位.54勝28敗:デンバー・ナゲッツ
3位.53勝29敗:ポートランド・トレイルブレイザーズ
4位.53勝29敗:ヒューストン・ロケッツ
5位.50勝32敗:ユタ・ジャズ
6位.49勝33敗:オクラホマシティ・サンダー
7位.48勝34敗:サンアントニオ・スパーズ
8位.48勝34敗:ロサンゼルス・クリッパーズ
—–プレイオフ進出ライン—–
(9位).47勝35負:実際のCOSMOS女子の勝敗
9位.39勝43敗:サクラメント・キングス
10位.37勝45敗:ロサンゼルス・レイカーズ
11位.36勝46敗:ミネソタ・ティンバーウルブズ
12位.33勝49敗:メンフィス・グリズリーズ
13位.33勝49敗:ニューオーリンズ・ペリカンズ
14位.33勝49敗:ダラス・マーベリックス
15位.19勝63敗:フェニックス・サンズ

勝敗だけで比較するとレギュラーシーズン1位とプレーオフ圏外の9位という差になります。

〇コンテストの有無による成功率・行動の変化・視線の変化の研究

では、なぜシュート成功率が落ちるのかを実験したデータがあります。
13人の熟練した青年プレイヤーを使った実験です。
バスケットから約5mから非コンテステッドシュート24本とコンテストテッドシュート24本をうった時の、成功率・行動の変化・視線の変化のデータです。

現れた行動と視線の違いは下記です。
・キャッチからシュートまでの時間は短くなる。(ディフェンスを意識して少し早くうつ)
・ジャンプの滞空時間は長くなる。(ディフェンスを意識して少し高く跳ぶ)
・シュートがリングにあたるまでの時間は長くなる(多分、シュート軌道が無意識に少し高くなったからでは?)
・リングを見ている時間は短くなる。(ディフェンスを見る時間が少し増えるから?)

すべての数字が体感としては分からない程度のちょっとの差です。
本人からすれば無意識レベルの差ですね。
しかし、二つのシュートは全く別物、極端に言うとアンダーバンドレイアップとオーバーハンドレイアップぐらいの違いと捉えてもいいと思います。
このデータを見て、フリーシューティングだけでなく、チェックされたシュート練習もやっぱり必要だと思いました。

しかしこの実験では、行動・視線の変化は明確にあったが、成功率の差はなかったと述べていますので注意も必要です。
個人的には、各24本×12人=288本のシュートなので、1000本ぐらいあれば成功率にも変化はあったと思います。
あとは、順番ですね。
非コンテストを24本うってからコンテストを24本うったのか?それとも交互にうったのか?でも結果は異なると思います。
コンテストのインテンシティ(本気度)がどれくらいだったのか(声は出したのか?等)でも結果は変わると思います。
なので、コンテストによって成功率に変化はあると根拠なく信じたいと思います。

〇自分たちのチームでやってみた



結果、自チームではシュートチェックがある時は、ない時の半分落ちるという結論がでました。

【スクリーンアウト】

相手がシュートを撃った時、振り向いてシュートの軌道を追うディフェンスがいますが、ボールウォッチャーだと、オフェンスリバウンドに入られてしまいます。
なので、必ず自分のマークマンをオフェンスリバウンドに参加させないようにスクリーンアウトします。
これはシューターのディフェンスに関わらず、アウトサイドのディフェンス全員に共通します。
シュートをうってから、リングにボールが当たるまでの時間は約1秒です。
この1秒だけを抑えれば、アウトサイドのマークマンにオフェンスリバウンドを取られることはありません。
シュートチェック直後にスクリーンアウトをすると、相手が接触の衝撃でわざと倒れてフリースロー(本当はフロッピングだけど)になる可能性があります。
なので、シュートチェックの後は、相手の目を見て、飛び込んでくるならばバンプして、そのままスクリーンアウトします。
飛び込んでこないのであれば、シュートの動作が終わった後に角度を90度反転し、側面でスクリーンアウトします。
もし、自分とマークマンの距離が遠いようであれば、無理にスクリーンアウトはせず、1秒間、相手が飛び込んでこないよう、目線を外さずに見張ります。

【ディフェンスリバウンド】

スクリーンアウトをして終わりではなく、そのあとのディフェンスリバウンドに積極的に参加することで、位置的優位・数的優位を作って確実にディフェンスリバウンドを取ります。
マークマンのオフェンスリバウンド意欲が強い場合は、スクリーンアウトに専念しても構いません。
いずれにせよアウトサイドの場合は、背面よりも側面の方が、スクリーンアウトはしやすいです。

〇シュートの落ちる傾向

リバウンドに行く際の参考として、シュートがどこに落ちる傾向にあるのかを是非、把握してください。

また、距離が遠い(3P)ほど遠くに落ちます。
アーチが低いほど遠く、アーチが高いほど近くに落ちます。

【バスケットボール指導教本での記載】

【クローズアウトのまとめ】

今回は「クローズアウト→シュートチェック→スクリーンアウト→ディフェンスリバウンド」の動きを解説しました。
他にも、クローズアウト→シュートチェック→ドライブケアのパターンもあります。(そっちの解説の方が多いですね)
その場合はジャブ&リトリートですが今回は説明を省きます。
クローズアウトの技術は三線から一線への移動に関わらず、ローテーションや、スクリーンなどで発生したギャップなど色々な場面で使える技術です。
クローズアウトの強いチームになって、相手のシュート率を10%落として、勝率を25%アップしましょう!

【クローズアウト関連動画】








適当に動画を集めました。
動画を見ると、色々なバリエーションがありますね~