ピック&ロール(PnR)中級編・クラブチームレベル

ピック&ロール中級編です。
クラブチームで一般的なディフェンスのスイッチ、スライドスルー、ファイトオーバー、ショーディフェンスに絞った中級編の対応策です。
アイス、ブリッツなどの上級コンビネーションディフェンスに対するオフェンスは省いています。

【ピック&ロールとは】

ピック&ロールとは、2対2のコンビネーションプレイで、オンボールのディフェンスに対してスクリーンをセットし、ゴール方向へのロールに合わせてパスをするプレイ。および派生するプレイ群のことです。
略称を「PnR」と表記します。

【PnRを仕掛ける位置】

PnRを仕掛ける位置をトップ、ウイング、コーナーに分けることができます。
またウイングをアウトサイドエルボーとサイドに分けることができます。

〇トップピック(ハイピック)

トップピックとは、90度の位置から仕掛けるPnRです。
通称ハイピックと呼ぶことの方が多いです。
ハイピックのメリットは左右を広く使えるという点です。
デメリットは、コートを四分の一で使えば2~3人で完結できるPnRですが、ハイピックはハーフコートの全部を使うので5人の理解度が必要となります。
また、PnRだけでフェニッシュを狙うのではなく、ハイピックを起点にショートロールして、3人目・4人目を使って得点を狙う(ポケットゲーム)のもハイピックのポイントとなります。
ハイピックからのプレイ集

〇アウトサイドエルボーピック

ウイング(45度)も角度が微妙に高いか低いかでPnRの攻め方が異なります。
エルボー(ハイポの角)の延長線上であるアウトサイドエルボーから仕掛けるピックです。
アウトサイドエルボーから仕掛ける場合は、3人目のオフェンスがコーナーにいる場合と、トップにいる場合が想定されます。
この場合、トップよりもコーナーにいてくれた方が圧倒的に攻めやすくなります。

まずはドライブの時に左右で差がでます。
三人目がコーナー(上図左)にいてくれると、ハンドラーは左右にスペースがあるので、どっちにもドライブできます。
反対に三人目がトップ(上図右)に残られると、スペースが狭いので、ウィークサイド方向にしかドライブできません。
ドライブの方向が絞られると、ディフェンスも対応がしやすくなります。

次にドライブ後にも左右で差が出ます。
ドライブした後、コーナー(上図左)がリフト(ドライブやダイブに合わせて上に上がる)してくれると、三人目のディフェンスの動きに応じて、②へのパスも可能となります。
反対に、トップ(上図右)のオフェンスはサークルムーブに従って、ウイングに降りてきてくてもパスコースに①のディフェンスがいるので、三人目のプレイヤーを使えません。
なので、アウトサイドエルボーピックは、Gがコートの四分の一を使って攻めたい時にウイングプレイヤーをコーナーに落として使うのが理想的だと思います。

〇サイドピック

サイドピックとはフリースローラインの延長線上からスタートするPnRです。
この場合はウイングにいるFがハンドラーになることが多いです。
サイドピックまで下がると、トップにいても左右両方ドライブすることができます。
ストロングサイド側にピックを仕掛ければ、トップのディフェンスを引き付けてキックアウトも可能です。
ウィークサイド側に仕掛ければ、ピックマンをハイポにピック&ポップ気味にショートロールすることが可能となり、選択の幅が広がります。

〇コーナーピック

コーナーピックとは0度から仕掛けるピックプレイです。
ドライブする方向が限られて動きが読まれやすいです。
挟まれるとアウトオブバウンズのリスクもあります。
仮にPnRが成功したとしても、スタントがヘルプに出てきやすいので、パスキャッチに合わせてつぶされるリスクもあります。
コーナーピックは仕掛ける必要がないと思います。
上級編として、コーナーピックの攻め方を解説した動画です。

【PnRの始まり方】

〇ステイ(ステーショナリー)

ステイとは「留まる」、ステーショナリーとは「動かない」という意味です。
ボールを保持したまま、またはドリブルした状態で、ピックマンに来てもらう始まり方です。
最も一般的なPnRの始まり方です。

〇DHO

DHOとは、ドリブル・ハンド・オフの略です。
ドリブルハンズオフパスをしたプレイヤーがそのままピックマンとなって仕掛けます。
NBAではトレンドのプレイとなっています。

〇アラウンド

アラウンドとは周辺という意味です。
パッサーがパスをしたプレイヤーの背後に移動し、手渡しでパスを受け、密着した状態からPnRを仕掛けます。
DHOもアラウンドもハンドラーがボールを保持している必要がないというメリットがあります。

【対PnRディフェンス(中級レベル)と対応方法】

〇スイッチ

スクリーンと同時に、マークマンをスイッチする対応策です。

対応方法:ストレッチ&1on1
ミスマッチが生じるのであれば、ハンドラーがストレッチ(後方に広がって)して、離れます(セパレート)。
インサイドのミスマッチを使うのであれば、面をとっているポストにパスして1on1させます。
アウトサイドでスピードのミスマッチが生じているのであれば、インサイドプレイヤーにポストを空けてもらい、勢いをつけて1on1を仕掛けます。

〇スライドスルー

ボールマンのディフェンスがスクリナーの後方を通って追いかけてきます。

対応方法:レギュラー&ジャンプシュート
ハンドラーは自分がノーマークになったら、常にジャンプシュートを狙います。
ディフェンスが後方に下がった場合は3Pを狙えるチャンスです。

〇ファイトオーバー(チェイサー)

ボールマンのディフェンスがスクリナーの前方を通って追いかけてきます。

対応方法:レギュラー&ドライブ
スクリーンがかかっている状態であれば、ディフェンスはハンドラーを後ろから追いかける形(チェイサー)になります。
極端な話、ハンドラーはドライブの後止まって、ディフェンスを背負っても大丈夫です。
ディフェンスが自分の後ろにいれば2対1の状況が作れています。

〇ショーディフェンス

ピックマンのディフェンスが前方にショーディフェンスをして、ハンドラーをヘジテーション(躊躇)させます。

対応方法:スリップ
ピックマンのディフェンスがショーしたら、すかさずピックマンがダイブします。
ハンドラーはあわてず、ループパスをだします。

〇その他の対応策、リジェクト

スクリーンをセットされたら、ハンドラーはスクリーンを使わずに反対方向にドライブすること(リジェクト)を心掛けます。
リジェクトは結構狙いますし、常にディフェンスに両方を警戒させた方が絞りにくいです。
またリジェクトをチャレンジして、駄目ならピック方向にドライブでも大丈夫です。

【PnRのコツ】

〇ランニングスクリーン

スクリナーはゆっくりとセットするのではなく、走ってストップしてセットします。
一瞬でもディフェンスを遅らせることで、優位な状況でスタートできます。

〇アングル

仕掛ける位置、オフェンスのタイプ、ディフェンスのタイプによっても異なりますが、一般的には後ろ斜め後方45度がベストです。
後方からくるスクリーンということで、ターゲットが気づきにくいのが一点です。
そして、ドライブが横よりも斜めに狙えるのも魅力の一つです。
斜めにスクリーンをかけるとPnRが最もやりやすいです。

〇プッシュスクリーン

スクリナーはターゲットにスクリーンをかけた後、そのままターゲットを巻き込んでダイブします。
特にスイッチで対応したつもりがスクリナーに巻き込まれると、ハンドラーがワイドオープンになりやすく、レイアップもジャンプシュートも簡単に狙えます。

〇ショートロール

PnRは、フェニッシュまでいけるのが理想ですが、現実的にはスタントの存在があり難しいです。
なので、PnRを起点と考え、3人目さらには4人目を意識したオフェンスができると効果を発揮します。
この起点となる考えを「ポケットゲーム」と呼びます。
具体的にはロールの位置をハイポ付近に留めます。
ハイポ付近は、スタントがちょうど出ていきにくい位置となります。
ハイポ付近でパスを受け取って、ヘルプがいなければダイブしてレイアップ。
スタントが出てこなければ、止まってジャンプシュート。
ヘルプが出てきたら、空いた三人目にインサイドアウトパス。
三人目は自分でシュートをうつか、エクストラパスで四人目にパスしてシュートします。

【ピック&ロール(PnR)中級編・クラブチームレベルのまとめ】

PnRは2対2のコンビネーションプレイですが、2対2練習だけでPnRがうまくなっても試合で使えません。
主な要因は、スタント(ヘルプディフェンス)がいるので3対3の中、または5対5の中の2対2という考えを持つ必要があります。
そうなった場合には、「だれがどこにいて」、「この動きに合わせて、ダイブする(リフトする、ドリフトする)」などの周りの協力も必要です。

また当チームのようにブリッツでディフェンスしてくるチームや、もっとレベルがあがるとアイスでディフェンスしてくるチームもあります。
その場合は、それぞれの対応策を用意する必要がありますが、高度過ぎるので、今回は外しました。

高度な対PnRディフェンス特集です。