フェイク・ア・ファウル(フロッピング、シミュレーション)

先日の試合で、オフェンスファウルと思えるプレイに対して、ファウルはコールせず、かわりにレイズ・ザ・ローア・アームのジェスチャーを審判がしていました。
オフェンスチャージなどに対する基準が変わったのではないかと思い、フェイク・ア・ファウルを深掘りすることにしました。

【フェイク・ア・ファウルのルール】

2017-18 JBA プレイコーリング・ガイドライン
7.フェイク(FAKE A FOUL)
(1)基本的な考え方
オフェンス・ディフェンスともにファウルをされたようにみせかけ、ゲームに関係する人達を欺くプレイをなくす

(2)フェイクに対する対応
①フェイクが起きた責任エリアの審判がジェスチャー(片方の手のひらを2回招くように)を明確に示す(クルーで共有)
②ボールデッドで時計が止まった時に、該当選手及びベンチに対して、その近くにいる審判が速やかに明確に伝える
③フェイクが起きた後、ボールデッドで時計が止まる前に、同じチームの選手が再びフェイクをした場合は、2 回目のフェイクという理解で TF を適用する
④「ノーコンタクトのフェイク」は Excessive Fake(あまりに過度なフェイク)として、ただちに、TF を宣する(一発)。またそれに準ずる過度なフェイクもダイレクトテクニカルの適用対象とする
⑤ディフェンス(または、オフェンスファウル)とフェイクが同時におきていると判断できる場合、ファウルを優先して判定する
⑥ディフェンス及びオフェンスファウルを宣した場合、フェイクのウォーニングはおこなわない
⑦オフェンス選手も、ファウルを受けたように見せるため倒れるなどのプレイはフェイクとする

(3)テクニカル時の対応
①選手に対して 1)手を上げ、時計を止める 2)フェイクのジェスチャーを示す 3)テクニカルを示す
②TO に対して 1)チーム及び選手の番号を示す 2)フェイクのジェスチャーを示す 3)テクニカルを示す
引用元 JBA 審判部

【フェイク・ア・ファウル登場によるオフェンスチャージの基準の変化】

結論から言うと、基準そのものは変わっていません。
しかし、新ルールの登場で、審判が気を付けるようになったので、実際は変わると推測しています。

今までは、ディフェンスが動いていない状態で、ある程度のスピードでトルソー(胴体)に対して正面からぶつかって、ディフェンスが後ろに転倒すれば、オフェンスチャージングをコールされるのが普通でした。
しかし、今後は、本当に転倒するほどの当たりだったのかを見極めようと審判がすると思います。
転倒の際に、「わーっ」などと転倒をアピールするような声は、逆効果になるかもしれません。
本当は踏ん張れたのに、ファウルにするために倒れた場合は、レイズ・ザ・ローア・アーム(倒れたことを示す)をジェスチャーされると思います。
この見極めは、実際に接触が伴っている選手と違い、審判にとって非常に難しいと思います。

【フロッピング】

NBAでは「フロッピング」というルールが2012年から適用されています。
フロップ(flop)を直訳すると「ばったり倒れる」となります。
NBAではビデオ判定などでフロッピングと判定されると、後日罰金が科されます。
フェイク・ア・ファウルのルールが導入されたのは、NBAのフロッピングの導入が少なからず影響されていると思います。

フロッピング特集動画

【フェイク・ア・ファウルの必要性】

佐々木クリス氏執筆の下記の記事をお読みください。

次に考えたいのが文化的な側面。
五輪をはじめ、世界中で同じFIBAのルールでバスケットボールがプレイされていますが、それでも国や地域によってルールの解釈が若干異なりますよね?
「フロッピング」もそう。
ザックリ書きますが、審判がいる以上それを含めて戦術! と考えるのか、審判を欺いてルールを乱用している! と捉えるかはその国の文化、特にバスケットカルチャーに大きく左右されます。
(2012年)8月のロンドン五輪のフランス対スペインの決勝トーナメント(準々決勝)での一戦は荒れましたね……。
フランスの選手いわく、スペインの選手の多くが、わずかな接触ですら大げさに振るまい、審判の笛を誘って「フロップ」したこと。
そしてそうすることによってスペインが流れをつかんだ(フランス59-66スペイン)ことが要因だと。
最後は業を煮やした……そうです。

中略

〇アメリカの考え方
米国のストリートや、PICK UP GAME(個人開放の体育館で知らない人同士がチームを組みプレイする3on3、4on4、5on5)の時に「フロッピング」とまでいかずとも(審判がいないので自己申告で)オフェンスファウルを軽々しくコールしようものなら「Weak! (軟弱もの!)」、「No Way! (あり得ない!)」と言われかねません。
コールは却下され、もちろん自分ボールにもなりません。
ディフェンスでもそうなんですが、場合によってはオフェンスでもPICK UPだとか「かすった程度はファウルじゃない」とか「軟弱なコールしちゃって」とか頻繁に口論になります(笑)。
だから米国でプレイする時は強い気持ちで、自分を証明しなければいけません。

ヨーロッパではサッカーが盛んですね。
サッカーではマリーシア(ずる賢い)プレイとして、わざと倒れて、フリーキックやPKなどを獲得する傾向にあります。
つまり、フロッピングも技術として正当に評価されます。
しかし、本場のアメリカでは、ちょっとの当たりで倒れるやつは軟弱者・卑怯者扱いされるようです。(行ったことないから知らんが)
そしてフロッピングを規制するルールがアメリカで先に起こり、追随する形でFIBAも乗り出したのではないでしょうか。

【プレイへの変化】

今回(といっても2017年)のルール変更の意図を酌み取ると、「ちょっとのあたりで倒れるなよ。ちゃんと見てあげるから、審判を欺くプレイはいけないよ」という流れだと思います。
私、個人の意見としても、本来ファウルではないのにファウルにしようとするのは良くないと思います。ってゆうか倒れるな。
ただし、区民大会などのような審判の技術が高くない大会であれば、アピールプレイをしないと正当なファウルが吹いてもらえないので、ある程度のアピールプレイは必要だと思っています。