ドリブルに関するルールの変遷

1891年12月21日にマサチューセッツ州のYMCAトレイニングスクールでバスケットボールの最初の試合が行われました。
その時にあったルールは13個だけでした。
その時から現在に至るまでの「ドリブル」のルールの変遷を追ってみます。

【1892年~1895年】

〇ルール
片手もしくは両手で、ボールをどの方向に叩いてもよい。

〇変更理由
初期は「ボールを持ったまま走ること」が認められていませんでした。
そこで、プレイヤーは、ルールに抵触しないように、ボールをパス以外で運ぶ方法を模索していました。
ルール改正でボール叩きながら進むことが可能となりました。

〇結果
「ボールを叩いて進む」という行為が、ドリブルが発生する先駆けとなりました。

〇所感
バスケットボールが誕生した当初は、ドリブルは認められてなかったようです。

【1898年~1899年】

〇ルール
ボールを両手でキャッチしたあと、床にバウンドさせた場合は、他のプレイヤーがボールに触れたあとでなければ、再びボールに触れることはできない。
また、プレイヤーは両手では許されないが、片手であれば、何回でもボールを弾ませてよい。

〇変更理由
プレイヤーがボールを進ませる方法として、「両手でドリブルをおこなう」ようになりました。
これは、小競り合いが起こる原因となりました。
さらに、プレイヤーがゴール下で固まってしまい、小競り合いだけでなく、怪我人がでるようにまでなりました。
小競り合いや怪我を改善するために、両手でのドリブルを規制しました。

〇結果
このルール改正が現在のドリブルの起源となります。
プレイヤーは密集地帯を抜け出す時、あるいはゴールまでノーマークで行けそうな時、周囲のディフェンスを出し抜くことができそうな時にドリブルをすることができるようになりました。

〇所感
この時はまだ、ドリブル→保持→ドリブル(ダブルドリブル)が認められている状態ということですね。

【1899年~1900年】

〇ルール
ドリブルの最中は、両手でボールに触れることができる(保持)のは一回だけとする。

〇変更理由
ダブルドリブルを利用した不当なプレイ(相手に背を向けて、後ろ向きにドリブルで攻める)があったので、ダブルドリブルを防ぐためにルールを変更しました。

〇結果
ゲーム中のラフプレイを相当数除去することができました。
結果的に、プレイヤー同士のパスプレイが増え、以前よりも高度なチームプレイが多くなりました。

〇所感
文面からは、現在と同様のルールと見受けられます。
ダブルドリブルを規制した副産物として、パスが増えることでチームプレイが成熟するきっかけになったということですね。

【1901年~1902年】

〇ルール
ドリブルの後のシュートはバイオレーションとする。
1回だけボールをフロアに弾ませて進むプレイは、ドリブルとみなさない。

〇変更理由
ドリブルしながらゴールめがけて進むオフェンスプレイヤーのほうが、断然ディフェンスよりも有利でした。
したがって、ドリブラーに対する制限が必要だと判断されシュートを禁じました。

〇結果
シュートするチャンスが大幅に制限されたことにより、得点の少ないゲームが増加しました。
当然シュートの少ない低得点ゲームはつまらなくて、ゲームの面白さも半減してしまいました。

〇所感
この改正は大きな違和感がありますね。
パスキャッチ後やリバウンド後しかシュートがうてないということですよね?
レイアップはうてないですね。
これはこれで練習として取り組めば、ちょっと面白いかもしれませんね。

【1903年~1904年】

〇ルール
一回ずつボールをフロアに弾ませて進むプレイはドリブルとみなす。
その際、ボールをこぶしでたたいてはならない。

〇変更理由
プレイヤーがボールを一回ずつバウンドさせるのを繰り返しながら長時間ボールを保持し続けることをさせないための改正です。
また、ボールをこぶしでたたきそこなって他のプレイヤーを叩くおそれがあるのでこれも防ぐための改正です。

〇結果
ボールをバウンドさせながら、こぶしで叩く行為を繰り返し続けることはなくなりました。
左右の手を交互に使って、片手でドリブルするようになりました。
結果、怪我人や小競り合いが減少しました。

〇所感
「第13条13-2ボールをこぶしでたたくことは、バイオレーションである。」
上記のルールに違和感があったのですが、こういった流れがあったのを知り、腹落ちしました。

【1905年~1906年】

〇ルール
ドリブルとは、プレイヤーが「ボールを投げる、バウンドさせる、たたく、転がす」等のいずれかの方法によってボールを弾ませ、さらにそのボールにほかのプレイヤーが触れるまでの間にプレイヤーが片手または両手で一回以上、ボールに触れた場合をいう。

〇変更理由
ドリブルをより明確な定義とする必要が起こったための定義化です。
1904年~1905年の定義では、混乱が残っていました。

〇結果
ドリブルの定義が明確になりました。

〇所感
この定義化というルール変更はナイスです。
言語化は大事ですよね。
ルールブックを見ていない人は、ドリブルの定義を理解できていないと思います。
沢北の「よーいドン」を、トラベリングとか、パスをして自分で取っただけだからもう一度ドリブルができるとか言う人もいますが、間違いです。
単に最初のキャッチまでが長いドリブルです。

参照:YAHOO知恵袋「スラムダンク沢北のよーいどん!のシーンありますよね?」

【1908年~1909年】

〇ルール
ルールに違反しないドリブルとは、そのドリブルが連続しておこなわれている場合とする。

〇変更理由
「ドリブルを途中で止めて、ボールを片手で隠し持ち、ドリブルを再び始める」というように、ディフェンスが一方的に不利にならないようにするための改正です。

〇結果
ドリブラーの有利さが減り、相対的にディフェンスが有利になりました。
プレイヤーは新たなドリブル技術を開発する必要性が生じました。

〇所感
やっぱり文面だけだと、明確な違いがわかりにくいですね。
動画か画像をつけてくれると助かります。
1908年にYouTubeがあれば~(笑)

【1911年~1912年】

〇ルール
ボールを片手で持つか、両手でボールに触れるまでの間は、ドリブラーはいかなる方法でいかなる方向にドリブルしてよい。

〇変更理由
ドリブルの制約が厳しすぎるので緩和しました。

〇結果
ドリブルの重要性が広く理解されたルール改正となります。
多くのチームがシュートやパスよりもドリブルの大切さを強調するようになりました。

〇所感
うーん、シュートよりもドリブルが大切と強調されるようになったのはなぜだろう??
深みにはまってきました。

【1915年~1916年】

〇ルール
ドリブルのあと、シュートをしてもよい。

〇変更理由
巧みなドリブルで相手を抜き、かわした後、シュートをしても認められていなかったための改定です。

〇結果
得点が増えました。
ドリブルのあとのプレイが続くようになりました。

〇所感
ここでやっとレイアップができるようになりましたね。

【1925年~1926年】

〇ルール
ルールに違反しないドリブルのあとのピポットは許される。

〇変更理由
ドリブラーが止まると、一度に多くのディフェンスが殺到して、プレイができなくなってしまいました。
プレイヤーがドリブルを終えたあともボールキープできるようにするための改正です。

〇結果
プレイヤーはより良いパスやシュートのためにピポットしてボールキープする場合が、以前よりも多くなりました。

〇所感
ピポットがなかった時のボールキープは大変だっただろうな~

【1927年~1928年】

〇ルール
ドリブルとは、1回ずつ、ボールをフロアに弾ませて進むプレイとする。

〇変更理由
あまりにも多くの問題が、ドリブルに関して絶えなかったため。

〇結果
1903年~1904年のルールの復活となります。
しかし、この変更はバスケットボール界では支持されず、すぐ前年までのルールに戻されました。

〇所感
うーん、やっぱり違いが全然分からない・・・
誰か、解説してください。
今度のコーチ研修で聞いてみます。

【1928年~1929年】

〇ルール
ドリブラーはドリブル中に極力、身体接触を避けるようにしなければならないという責任を持つ。

〇変更理由
ドリブラーとディフェンスとの身体接触が起こると、ほとんどの審判がディフェンスの反則にしてしまうために改正しました。

〇結果
ディフェンスもまたコート上では、オフェンスと同等にプレイする権利があるということが確認されました。

〇所感
つまり、オフェンスから突っ込んでも、身体接触があればディフェンスファウルになっていたということでしょうかね?
リーガルガーディングポジションの定義がまだなかった時代ということですかね??

【1935年~1936年】

〇ルール
ボールをキャッチした際のファンブルもしくはキャッチしそこなってボールキャッチし直そうとするなんらかのプレイはドリブルとみなさない。
また、ドリブル中にボールが手に触れていない間は何歩進んでも良い。

〇変更理由
ボールをキャッチしようとしたときファンブルすると、それをドリブルであると判定する審判がいたための改正です。
またドリブラーはドリブルの際のフェイクやフェイントのための歩数を制限されていました。

〇結果
オフェンスプレイヤーがドリブルを以前よりも頻繁に行うようになりました。
ドリブラーの優位性が高まり、歩数の制限も時間の制限もなく、緩急自在のドリブルを使うようになりました。

〇所感
ファンブルなのかコントロール(ドリブル)なのかの判断は難しいですよね。
私もよく、ファンブルした後にドリブルしたらダブルドリブルを吹かれて、「ファンブル」と抗議したことがありましたが、ビデオで見ると、非常に判断が難しいと反省しました。

【ドリブルに関するルールの変遷のまとめ】

原文はこちらです。

基本的には小競り合いや怪我が少なくなるようにと、オフェンスとディフェンスの有利不利が偏りすぎないように是正を繰り返す形でのルール改正という流れになります。
最終変更が1936年で止まっているので、この後の変更はないのか、記載していないだけかはわかりません。
バックコートバイオレーションやゼロステップなどのドリブルに関わるルール改正は頻繁にありますが、ドリブルそのもののルール改正は近年はなかったと思います。

なぜ、ドリブルが生まれたのか?
どのように発展していったのか?
など歴史の変遷を追うと、新しい視点で見えるようになります。
現在だけを見るのではなく、時には過去にも振り返ることで、未来も見えるようになれる気がします。
学びは尽きません。