2019年度JBA公認E級コーチ養成講習会(eラーニング)受講の勧め

2019年度よりコーチライセンス制度が改定され、JBA公認E級コーチ養成講習会はeラーニングにて受講していただくことになりました。
eラーニングでは、バスケットボールを指導する上で必要となる基本的な内容について学ぶことができます。
なお、JBA公認E級コーチライセンスはお申込から最短3日で取得することができます。

ということで、早速、受講し、資格を取得しました。
受講の仕方は、JBA公認E級コーチ(eラーニング)取得ガイドでご確認ください。

【JBAが養成したい理想のコーチ像】

JBAが養成したい理想のコーチ像とは、様々なコンテクスト(状況)の中で、プレイヤーやチームの潜在的能力を最大限に発揮させ、自分の能力を発揮・向上させることができるコーチとしています。
コーチからプレイヤーに教えるよりも、プレイヤーの学びや主体性を重視し、引き出すことです。
また、プレイヤーを理解し、固定概念にとらわれず柔軟な指導ができることです。

従来のコーチ像だと、豊富な知識があり、自分の美学をプレイヤーに教えることができる。
真っ白なキャンパスをコーチの理念色に染めて、ぶれることなく一貫したコーチの理念に染めることが良いコーチと見られがちでした。

従来のコーチ像の偏りが強いと、その世代では高いパフォーマンスを発揮することができるかもしれません。
しかし、バーンアウトを起こしスポーツが嫌いになったり、コーチの権限が強くなりすぎてパワハラにつながったりします。
コーチはプレイヤーの未来に触れる責任ある立場となります。
コーチ自らが学び、変化し、インテグリティを重視し、日本のバスケットボール界をより良くしていく理念を持つことが重要です。

【コーチライセンス制度】

コーチライセンスは下記の通り、3つのステージに分かれます。
強化:より競技力を高めたいプレイヤーを指導(S級・A級・B級)
育成:育成年代の指導に必要なライセンス(C級・D級)
普及:コーチライセンスのゲートウェイ、eラーニングで取得(E級)←今はここ



コーチライセンスの目的は、指導力の向上は勿論のことですが、組織化することで交流を促し、よりよいバスケットボール環境を提供できるようにするための素地となります。

【バスケットボールってどんなスポーツ?】

〇スポーツ本来の意味

スポーツとは、「運動+ゲーム」となります。
スポーツの語源は「楽しみ・遊び」です。
なので、勝利至上主義ばかりが正しいわけではありません。
コーチの指示に従ってやらされるのではなく、自発的に活動できるよう支援することがコーチにとって重要となります。

〇バスケットボールの価値

ファン:楽しむこと
パッション:なりうる最高の自分を追求する姿勢
チームワーク:結束し、協力・協同すること
リスペクト:様々な学びを提供してくれる全ての人々に感謝すること
インテグリティ:誠実さ、真摯さ、高潔さ

上記がバスケットボールの価値となります。
ここには、勝利という言葉はありません。

〇バスケットボールの特性

・ボールの所有権をめぐる争い
シュートは半分が外れるので、リバウンドを多く獲得したチームが多くの攻撃権を得られます。
同様に、ターンオーバーが少ないチーム、ルーズボールを多く獲得できるチームもシュートの本数を増やすことができます。

・トランジションとゲームテンポ
ディフェンスから素早くオフェンスに切り替えれば、数的有利な状態で攻めることができます。
また、早く攻めるだけでなく、ゲーム状況に応じて時間をかけて攻撃することもできます。(スローダウン)

・オープンスキルの重要性
クローズドスキル(安定した状況での技能、技術の要素が多いプレー、フリースロー)よりもオープンドスキル(変化する状況での技能、判断の要素が多いプレー、フリースロー以外のほとんど)が必要となるスポーツです。

【練習におけるコーチの役割と行動】

〇練習の流れと行動

①練習前の行動
プレイヤーのコンディションを把握し、練習メニューを確認します。
また、練習の目的およびゴールを明確化し、プレイヤーに共有します。

②練習中の行動
計画を立てシンプルに指示を出します。
デモンストレーションは、ポイントを絞って行います。
また、指示をするだけでなく、そのあとの観察と分析も大事な作業となります。
全体の動きを観察し、助言します。
またはあえて助言を控えて様子を見ることもあります。
助言する時は、心理状態を考慮したフィードバックをし、相手の気づきを引き出します。
ティーチング(教える)よりも、コーチング(導く)の方が自発性の促進につながるので、オーバーティーチング(自発性が損なわれるような教えすぎ)に気を付けます。
指導する時は、プレイを止めて指導(フリーズコーチング)する時と、プレイを止めずに指導(シンクロコーチング)の2パターンあります。
フリーズコーチングは、プレイが止まるので指導に集中してもらえ、理解してもらいやすいですが、反面としてモチベーションや練習への集中力が低下するリスクがあります。
対して、シンクロコーチングは、練習をストップしないので、集中力は維持しやすいですが、きちんと伝わっているか確認がしにくいです。
フリーズコーチングとシンクロコーチングは、状況と理解度に応じて、使い分けます。
個人的には、ほとんどをシンクロコーチングで対応していますが、スクリーンアウトの徹底などのチーム全体で大事にしてほしいことのルールが破られた場合は、フリーズコーチングで伝えています。
また、サンドイッチ法という言葉があります。
褒める時はただ褒めれば十分ですが、指摘する時は、相手に受け入れてもらえる状態でないと、聞き入れてもらえない可能性があります。
その場合は、サンドイッチ話法、「肯定→伝えたいこと→肯定」のステップで、感情に配慮しつつ伝えたいことを伝えます。
例えば、「今のシュートチェック良かったね、相手もシュートを外したよ(肯定)、そのあとスクリーンアウトをしっかりしてくれたら、確実にマイボールにできたね(伝えたいこと)、相手につっこまれてもフィジカル負けしない体になってきたから、みんなでスクリーンアウトを頑張ろうね(肯定)」などのように、全体的にポジティブに伝えます。

 

③練習後の行動
クーリングダウンを行い、疲労度やケガの有無を確認します。
また、振り返り、良い点や改善点を記録します。

〇練習計画の立案と作成

コーチとプレイヤーの共通した目標や方針があるかを確認します?
人はそれぞれ立場や価値観が違うので共通した目標や方針がバラバラだったコンセンサスを統一化してくれます。
そのためには、必要項目を列挙します。
戦術、技術、コミュニケーション、精神面などの人間的成長などです。
列挙した後は、優先順位を決定します。
「必ず、次にやるべき、できれば」のように、ざっくりとした優先順位であればつけやすいと思います。長期(一年)・中期(数か月)・短期に期分け(ピリオダイゼーション)し、実行していきます。

〇練習計画の評価・見直し・再構築

練習は行動だけで終わらせずに記録し、評価し、見直します。
もし、思考せずに練習ができるレベルになった場合でも同じ練習を続けると、頭を使ったバスケができなくなるので、刺激を加えます。
ただし、男性は器用に新しい練習をこなし、飽きっぽく刺激を求めますが、女性は不器用で辛抱強く、確実にできるまで今の練習をやりたがる傾向にあります。(個人差も大きいです)
なので、モチベーションを意識しながら練習をコントロールします。
私の場合は、基本的にはベースとなる練習に毎回オプションを加えることで、常にラーニングゾーンレベルまで頭を使わせるように意識しています。
行き過ぎた変革は、パニックゾーンになり、練習に対するモチベーション低下にもつながります。
積み上げるだけではなく、できあがったものを一度ゼロベースにすることもコーチとしての成長につながります。
これをスクラップ&ビルドと呼びます。
例えば、ドラゴンボールの孫悟空は、「亀→界王→悟」と胴着のマークが変わっています。
これは亀仙人から教わった技術をスクラップ&ビルドし、界王から教わった技術もスクラップ&ビルドし、自身の孫悟空流に免許皆伝したからです。
もし、クリリンのようにいつまでも「亀」の状態だったら、今のようにはなっていなかったかもしれません。

【コーチの役割とは?】

〇コーチの役割ってなんだろう?

コーチとは、コーチはプレイヤーの主体的な学びや成長を支えるサポーター(支援者)である。
コーチやチームを中心とするのではなく、プレイヤーを中心とする「プレイヤーズセンタード」という概念があります。
国際コーチングエクセレンス評議会があげるコーチが果たすべき役割と機能としては下記を挙げています。
・ビジョンと戦略の設定
・環境の整備
・人間関係の構築
・練習での指導と競技会への準備
・学習と振り返り

〇プレイヤーの育成

繰り返しますが、コーチの役割はプレイヤーを勝たせることではありません、育成です。
では、育成とはなんでしょうか?
FIBAやJBAではプレイヤーの育成を、プレイがうまくなることよりも、エンジョイや人間的な成長を育成のゴールとしてあげています。
例えば、「バスケットボールが大好きなプレイヤー」、「ゲームを楽しむことができるプレイヤー」です。
日本では大学の引退試合で「やっとバスケから解放される」という発言もあるそうです。
勝つためにはきつい練習を行い、バスケが嫌いになり、バーンアウトしてしまうんでしょうかね。
それ以外にも、「主体的に取り組み、自ら考え、判断できるプレイヤー」、「トライ&エラーを恐れず、自ら挑戦し、工夫し、努力するプレイヤー」、「コミュニケーション能力の高いプレイヤー」と、人間的な成長をフォーカスしています。
そして、評価されるコーチとして、バトンランナーという考えが重視されています。
バトンランナーとは、「自分が受け持つ期間にプレイヤーの能力を十分に伸ばし、プレイヤーの財産とし、次のコーチに繋げていく」コーチの考えです。
もし、中学生で190cmプレイヤーが入れば、インサイドプレイヤーとして使うことが最もチームの勝利に貢献できると思います。
しかし、アウトサイドプレイヤーとして育てることができれば、渡邊雄太のように206のアウトサイドもインサイドもできるプレイヤーに成長し、NBAを狙える逸材となります。
自分のチームの優勝のために使うのか、本人の将来を考えて育てるのかでコーチの資質が問われます。

〇育成年代のコーチング

プレイヤーの将来を考え、長期的な視点で発達段階および成熟度に合わせた指導をするLTAD(Long Term athlete Developmet、長期選手育成理論)という概念があります。

まずは、基礎体力の養成として、楽しみながら基礎を学ぶ段階です。
コーディネーションの発達も考慮して、どんどんいろいろなバスケットボールの動きにチャレンジし、神経を刺激する段階です。
そして、全身持久力の強化→有酸素的要素が高いトレーニング→ダッシュを繰り返すトレーニング
→筋力増強トレーニング→パワーを発揮するトレーニングなどのように試合のためのトレーニングや勝利のためのトレーニングなどに移行します。

〇コーチはどうあるべきか?

コーチはプレイヤーの人間力を高める役割を担うと同時に自らの人間力を向上しないといけません。
人間力とは、正しい知識を見極める思慮深さがあり、知識を適切に活用する知恵も必要です。
人々のなかで共生する規律違反、臆することなく判断をくだす勇気、相手の気持ちや考え方に配慮できる思いやりなども必要です。
また、コーチは学び続ける責任があります。
「学びをやめたら、教えることもやめないといけない」と言われており、経験のみに依存するコーチングから脱却し、多様な価値観を身に付け、状況に応じて柔軟に行動できることが理想です。
そのため、国内外の最新の指導内容や指導法の習得に努めることをコーチは求められています。

【安全管理】

〇活動施設の確認と点検

コーチは指導や育成とともに、プレイヤーの安全を確保する守護神としての立場でもあります。
そのために、AEDの位置を把握したり、救急蘇生法の知識・技能を有する必要があります。
また、避難経路や避難場所を頭に入れて、いつでも共有できる状態にします。

〇バスケットボールに多い外傷・障害

バスケットボールは、コンタクトの多いスポーツなので、ケガも多くなります。
主なケガとしては、足関節捻挫、前十字靭帯損傷、頭部外傷などです。
ケガをした場合はRICE処置を行います。
Rest(安静)患部を動かさない
Ice(冷却)患部を冷やす
Compression(圧迫)患部を固定、圧迫する
Elevation(挙上)患部を心臓より高くする

2021/3/31追記
RICEは、1978年にDr.ゲイブ・ミルキンが「ザ・スポーツ・メディカル・ブック」で提唱したものです。
しかし、2014年にDr.ゲイブ・ミルキン自身がHP上で「RICE処置は回復を遅らせるものかもしれない」と述べました。
現在、欧米ではその有効性に疑問を投げかける文献が続いています。
かといって、全否定されている訳ではありません。
怪我をしたら「rice price police」で処置し、早めに病院に行ってことです。


また、女性や育成年代特有のケガや病気にも配慮して指導する必要があります。

【ゲームにおけるコーチの役割と行動】

〇ゲームの流れと行動

ゲーム前はメンバーの出欠や用具の確認をし、大会本部にエントリー表を提出します。
そして、ゲームまでのタイムスケジュールを確認したら、ウォームアップでプレイヤーを観察したり、相手チームを観察し、戦術の確認などをします。

ゲーム中のコーチの役割は、メンバーチェンジ、タイムアウトの請求・指示、ゲーム進行中のプレーに対する指示・評価などです。

ゲーム後は、クーリングダウンをして疲労を流し、体調を崩さないように汗をかいた状態で冷やさないようケアします。
そして、ゲームを振り返りミーティングします。
「勝利は選手のおかげ 敗戦は指導者の責任」という言葉があり、プレイヤーの感情を配慮してミーティングする必要があります。
また、オフィシャルなどをやる必要があれば、確実に行います。
ゴミの片づけや忘れ物などがないよう確認し、解散指示をだします。

〇審判とのコミュニケーション

コーチは審判やTOとコミュニケーションや意思疎通をとり、ゲームを厳正かつ遠隔に進めていきます。
相手に対して敬意と尊敬の念を持ち、不遜な態度は示してはいけません。
また、バスケットボールの競技規則を理解し、ルールや規範に則った言動をする必要があります。

【コーチの倫理(モラル)とは?】

〇コーチのモラル

主役はプレイヤー(プレイヤーセンタード)であり、プレイヤーの活動の支援である立場を認識します。
プレイヤーが主体的に判断し行動できるように促します。
プレイヤーの権利や尊厳を尊重し、公平に接します。
プレイヤーとの信頼関係を築きつつも、主従関係や親密な関係は避け、適度な距離感を保ちます。

〇モラルに反する行為の根絶

バスケットボールに関わらず、日本の学生スポーツは、モラルに反する行為が生じやすい構造的要因があります。
日本大学フェニックス反則タックル問題のように、コーチとプレイヤーが絶対的な主従関係にあるそのほか、行き過ぎた勝利至上主義なども要因のひとつです。
JBAでは、「クリーンバスケット、クリーン・ザ・ゲーム ~暴力暴言根絶~ 」を掲げています。

2019年からはコーチによるプレイヤーへの暴言はテクニカルファウルの対象となり、退場にもなります。
セクハラなどのハラスメントや不正行為などもなくし、コーチもプレイヤーもインテグリティの精神を持ってバスケットボールに関わる必要があります。

【2019年度JBA公認E級コーチ養成講習会(eラーニング)のまとめ】

もし、バスケットボールを指導する機会がある人は、是非、公認コーチを目指してほしいと思います。
D級では、JBAが戦術やスキルの正解を提示する場ではなく、受講者自身が考え、他者の意見に触れながら、自身の考えについて振り返ることを目的としています。

私はJBAとは無関係ですが、改めて、受講の仕方のURLを張っておきます。
JBA公認E級コーチ(eラーニング)取得ガイドでご確認ください。