マンツーマンディフェンスの分類~ノーミドル以外の守り方~

【マンツーマンディフェンスについて】
現在、私たちのチームでは、戦術について、全員で意見を出し合って、一個ずつ確認しております。
次の練習でのテーマがディフェンスの守り方の予定となっています。
おそらく、多くのプレイヤーが外側に抜かせる(ノーミドル)ことが正しいと思ってディフェンスしているか、何も考えずに一生懸命ディフェンスをしているかのどちらかだと思います。

私の個人的なプレイヤーとしての意見は、「抜かせる方向のディレクション」は嫌いです。
ディフェンスの最終目標は、シュートを決められないことです。
しかし、抜かせる方向付けは、ディフェンスで相手のシュートが失敗しても、ノーミドルであればミドル側に抜かれたら失敗としてみなされます。
では、ベース側に抜かせて、三線がいなくてレイアップを決められたらどうなのか?
チームによっては仕方ないで済むこともあるかもしれませんが、それも何か違う気がする。

じゃあ、どう守ればいいのか?
答えは、自分達と相手と相性次第かなって思います。

結局は、何が正解なのか?ではなく、どこまで決めるか?
決め事をどこまで徹底させるか?(柔軟化させるか?)だと思います。
今回はマンツーマンディフェンスの分類方法を中心に、私の考えを述べていきます。

【マークする位置による分類】

マッチアップしているディフェンスをマークする位置による分類方法です。

〇オールコートマンツー

エンドラインのボール出しからプレッシャーをかけるマンツーマンディフェンスのことです。
マンツーマンでプレスを張る時は、オールコートマンツーとなります。
40分続けるというより、ここぞという時に使うイメージです。

〇スリークォーターマンツー

バックコートのフリースローラインあたりからコンテインし、徐々にプレッシャーを強めていくマンツーマンディフェンスのことです。
ハーフラインあたりでプレッシャーを強めて、バックコートバイオレーションを一度狙い、ハーフコートを越えたら、激しく当たります。
人数が多く、体力があるチームならば40分続けることも可能なディフェンスとなります。

〇ハーフコートマンツー

ハーフコートを越えたあたりからプレッシャーをかけるマンツーマンディフェンスです。
プロやU世代など、多くのカテゴリーで、最も使用頻度が多いディフェンスとなります。
インサイドにディスアドバンテージがある場合は、最低でもハーフコートぐらいからプレッシャーをかけた方がよいと思います。

〇クォーターマンツー

3Pライン付近からプレッシャーをかけるマンツーマンディフェンスのことです。
クラブチームだと、最も使用頻度が高いディフェンスとなります。
スティールを狙えるチャンスが減りますが、無理に体力を消耗することなく、ディフェンスできます。

〇マークする位置による分類のまとめ

クォーターでしっかりと守るマンツーが基本となります。
そのうえで、守る位置をどこまで前面に広げるかが差となります。
守る範囲が広くなればなるほど、体力の消耗が多くなります。
反面、ボールを奪えるチャンスが増え、また高い位置でのスティールはイージーな速攻につながりやすくなります。

【マッチアップの方法による分類】

マッチアップする相手の決め方による分類です。

〇アサインマンツー

あらかじめマッチアップを決めておくマンツーマンディフェンスです。
一般的なディフェンス方法となります。
現在は99%以上、アサイン方式を採用していると思います。
デメリットをあげるとすれば、マッチアップしているプレイヤーがずれる場合です。
自分を守っているプレイヤーをそのままマッチアップできれば、トランジション(攻守の切り替え)で近くにいることが多いので、ディフェンスに転じやすいです。
しかし、自分を守っているプレイヤーでない相手をマッチアップしないといけない場合、トランジションの都度、マッチアップを探す必要があり、見失いやすくなります。
あえてマッチアップをずらして、相手を混乱させるという手法もありますが、自分達が混乱してしまうこともあるので、マッチアップはお互いが一緒の方が無難となります。

〇ニアレストマンツー

事前にマッチアップを決めず、近くのプレイヤー(レアレスト)をマッチアップするマンツーマンディフェンスです。
アサインマンツーの場合でも、ターンオーバーからの速攻を止める際、マッチアップが大きく変わることあります。
その場合は、自分のマークマンに固執せず、「ニアマン」などと声を出し、ニアレストマンツーマンで対応します。

昔(1927年)は、バスケットボールもサッカーのように、攻める人(フォワード)と守る人(ガード)が分業化されていました。
当時は、ニアレストでフォワードに対してガードが守っていたそうです。

〇マッチアップの方法による分類のまとめ

アサインマンツーで守り、ターンオーバーなどの時はニアレストで対応します。
マッチアップゾーンディフェンスも、感覚としてはニアレストマンツーに近くなります。

【抜かせる方向付けでの分類】

〇ノーミドル

ボールマンをウィークサイド(外側)に抜かせる方向付けのディフェンスです。
換気扇が外に空気を流しだすことに例えて「ファンディフェンス」とも呼びます。
現代バスケの主流となり、多くのチームが採用しております。
ノーミドルの場合は、二線はディナイ、三線はオープンが原則となります。

〇ノーベース

ボールマンをストロングサイド(内側)に抜かせる方向付けのディフェンスです。
大きく入り口から小さい出口に集める漏斗(ろうと)に例えて「ファネルディフェンス」とも呼びます。

ノーミドルが流行する前の主流のディフェンスでした。
ノーベースの場合は、二線・三線ともにオープンが原則となります。
ジェリコ・パブリセヴィッチは2006年男子日本代表にファネルディフェンスを採用しました。

〇ノーミドルとノーベースの比較

ディフェンスにとって内側はヘルプがいっぱいいるのでストロングサイドと呼びます。
反対に外側(ライン側)はヘルプがいないのでウィークサイドと呼びます。
しかし、ディフェンス側がウィークサイド側にあらかじめ三線を配置することで、ラインを味方にしてゴールアタックを難しくすることに成功させました。
バスケットボールの進化により、ディフェンスの弱点であったウィークサイド側にボールマンをディレクションするという守り方が主流となりました。

名称:ノーミドル⇔ノーベース
別称:ファンディフェンス⇔ファネルディフェンス
ディレクション:ウィークサイド⇔ストロングサイド
ヘルプの人数:少ない(ただしあらかじめ三線が準備する)⇔多い(あえて準備しなくても三線がいることが多い)
展開:ラインがあるので戻すパスしか出せない⇔逆サイドも含めてどこにでもパスが出せる

〇ノーディレクション

ボールマンを抜かせる方向付けをしないディフェンスです。
U世代に多い守り方となります。
例えば、利き腕の右側にしかドライブができないプレイヤーにマッチアップするのであれば、左に誘導した方が自滅してくれる確率があがります。
キックアウトからの3Pがバンバン入るチームとかでなければ、ノーミドルやノーベースに拘る必要はないと思います。

【ディフェンスへのプレッシャーによる分類】

〇タイトディフェンス

ボールマンに対して、ワンアーム&トレースハンドで常にボールにプレッシャーをかけるディフェンスです。
プレッシャーがきつい分、ディフェンスの疲労・ファウル・抜かれる可能性が高くなります。

〇ルーズディフェンス

ボールマンに対して、ワンアームより距離を空けて、抜かれないことを優先するディフェンスです。
もし、マッチアップしているプレイヤーにアウトサイドのシュート力がないのであれば、抜かれないように守るというのも一つの選択肢です。
しかし、たとえ抜かれなかったとしても、楽にボールを持たせることができるために、チーム全体で方針をそろえないと、ある意味、穴となります。
三線が弱くて抜かれてはいけない、人数が少なくて体力を温存しなくてはいけない等の理由がなければ、タイトに守ることを推奨します。

【スクリーンの対応方法による分類】

〇フローティングディフェンス

スクリーンをされたら、ノースイッチをベースに対応するディフェンスです。
フローティングとは浮くという意味です。
スイッチするとミスマッチが生じてしまうので、主流の守り方となります。

〇スイッチングディフェンス

スクリーンをされたら、スイッチをベースに対応するディフェンスです。
ミスマッチが生じても素早く、スイッチのスイッチをすれば対応は可能となります。
レイカーズがオールスイッチのスイッチングディフェンスを選択していたそうです。

【チームで守るか個人で守るかによる分類】

この分類は、ちょっと強引な分類で、独自の解釈となりますのでご注意ください。

〇シェルディフェンス

ヘルプ&リカバリーをルール化したタイトなマンツーマンディフェンスです。
一線はタイトに守り、ノーミドルでウィークサイドにディレクションします。
二線はオープンディナイでボールを入れさせないようにします。
同時にドライブに対してもチェックバックで対応します。
三線はサギング&フローティングで、ヘルプポジションにあらかじめ入り、ドライブがペイントに入る前にヘルプします。
また、素早くローテーションを行い、ノーマークを作りません。

〇ストレートマンツー

ヘルプに頼らず、個人の判断に任せたマンツーマンディフェンスです。
一般開放やストリートコートでのピックアップゲームでは、主流の守り方となります。
基本的には、自分のマークマンは自分の責任において守ります。
どうしても守り切れない場合はマッチアップを変更するか、二線の時にディナイを頑張ってボールを持たれないようにするか、三線にヘルプを頼んで外のシュートをうたせないことに専念します。
またディフェンスの最終的な目標は点を決められないことなので、チームの決め事を優先するよりも、個々人の判断に任せた方が効率の良い可能性もあります。

【マンツーマンディフェンスの分類~ノーミドル以外の守り方~のまとめ】

私の経験則が軸となってしまいますが、ノーミドルを採用しているチームが多数派であるため、やはりノーミドルで守るのが最も意思疎通が取りやすい守り方となります。
「ノーベースで守ろう」って提案しても、ほとんどの人が理解をしてくれません。
また、チームとして決め事がなくても、ノーミドルが当然と考えている人も多数います。
だったら、ノーミドルで守ることが最も楽となります。
しかし、ノーミドルで守るには、二線・三線およびローテーションの役割がしっかりとしているのが前提です。
一線のディレクションだけをノーミドルにしても、効果は薄いです。
チームとして改善ができる環境であるならば、多くの選択肢を知ったうえで、しっかりと意見を出し合い、挑戦と調整を繰り返して、自分たちのチームディフェンスを確立していくことをお勧めします。